112 「無遠慮で嫌な経営者」は成功する可能性が高い!

経営者としての「成功」とは何でしょうか?莫大な利益を得て、巨大な企業をつくりあげることでしょうか?あるいは利益をスタッフに還元し、小さいながらも長きにわたり社歴を重ねてゆくことでしょうか?その答えは私には判りません。

 

手前味噌なお話ですが、コネもなかった東京で資金もない状態から起業し、約20年経営を続け、その間雇用を生み続けてきたことも「経営者としての成功」かも知れないと、自分の人生を振り返って考えることがあります。

 

その約20年間自分がクライアントやスタッフから好かれて来たか?と振り返って考えると、決してそうではなく、むしろ「嫌われ者」だったと感じています。それが主観的な考えでない証に、先日スタッフのおひとりから「あなたは厚かましい」と言われました。

 

大辞泉(小学館)によると「厚かましい」という言葉は「ずうずうしく遠慮がない」と言う意味だそうです。ところで、The New York Times 2015年6月26日号に『The Bad Behavior of Visionary Leaders(圧倒的な成功者は「無遠慮で嫌なヤツ」ばかり)』と言う記事 *1 が掲載されました。

 

記事によると、スティーブ ジョブズ(Steve Jobs)は「繊細ながら無礼」と、Apple社のChief Design Officer(C.D.O:最高デザイン責任者)ジョナサン ポール アイブ(Sir Jonathan Paul Ive,KBE)が語ったとあります。

 

また、スティーブ ジョブズ唯一の公認伝記「Steve Jobs」の著者であり、伝記作家のウォルター アイザックソン(Walter Isaacson)は、スティーブ ジョブズのことを「周囲を不快にさせる性格は、本人にとって役に立つというより障害になっていた」と語っています。

 

また、アメリカの起業家であるスペースX社のCEO イーロン マスク(Elon Musk)も「彼はとても紳士で誠実なときもあれば、人に無駄に厳しくあたるときもある」とジャーナリストのアシュリー バンスが語ったとあります。

 

また、Amazon.com の共同創設者でありCEOのジェフリー プレストン ジョーゲンセン(Jeffrey Preston Jorgensen)は、彼が癇癪を起こすと「気がふれたように、残酷にさえなり、従業員に辛辣な非難を浴びせるときもあった」と、『The everything story:Jeff Bezos and the Age of Amazon(ジェフ・ベゾス 果てなき野望)』の著者ブラッド ストーンは語ったとあります。これらのことから、スティーブ ジョブズもイーロン マスクもジェフリー プレストン ジョーゲンセンも、必ずしも人から好かれる性格ではなかったようです。

 

この点に関して記事では「彼らの悪しき振る舞いのほとんどは、意図的に人を傷つけるというより、不安に駆られた衝動的な反応ではないだろうか。優越感からではなく、むしろ自信がないからの言動ではないだろうか。」と論じています。

 

決して意図的に人を傷つけるつもりではなく、自分自身に自信がなく、確証が欲しい、正しいことが知りたいのかも知れません。だから曖昧な表現を避け、ストレートな表現や質問を相手にぶつけてしまう。相手はその表現や質問を聞いて「無遠慮で嫌なヤツ」と思ってしまうのでしょう。

 

反応性愛着障害の研究を行う東京福祉大学名誉教授であり、関西学院大学客員教授でもあるヘネシー澄子 教授は、著書『子を愛せない母 母を拒否する子』の中で、スティーブ ジョブズは生後数週間で、生みの親から離され養子となった。彼は幼いころから多動で衝動的な傾向を示し、殺虫剤の「味見」をしたり、コンセントにヘアピンを差し込んだりして、何度も病院に担ぎ込まれている。今ならADHDの診断を受けただろう。その背景には、明らかに愛着障害があった。彼が示した多動や衝動性は、本来の発達障害によるものというよりも、愛着障害によるものと考えられる。*2 と論じています。

 

また「スティーブ ジョブズはADHD(注意欠陥多動性障害/注意欠如多動症)であった」や「スティーブ ジョブズはアスペルガー症候群(広汎性発達障害)であった」と言う説が、多くのインターネットメディアで取上げられています。真意は定かではありませんが、そのような説が多数見られることからすると社会性・対人関係・コミュニケーションなどに障害があったのだろうと私は考えています。

 

これらの障害には、空気が読めない、柔軟性が乏しい、相手の言葉の裏を読むことが出来ない、相手の気持ちを考慮せず、自分だけの欲求をぶつける、と言ったネガティブなところがある反面、興味が特定の対象に限定される、パターン化された生活リズムを好む、と言った好きなことを継続すると言うポジティブな面もあります。私は、冒頭のThe New York Times の記事を読み、スティーブ ジョブズだけでなくイーロン マスクもジェフリー プレストン ジョーゲンセンも同様に何らかの精神神経的障害がある可能性が高いと感じました。

 

少し偏った思考ですが、あらゆるビジネスがカオスな状態にある現代において、経営者には、興味が特定の対象に限定される、パターン化された生活リズムを好む、と言った何らかの精神神経科的障害があることの方が優位なのかも知れません。

 

また、他国籍・異文化の方々をクライアントやスタッフにもつことが珍しくなくなったグローバル社会に於いては、むしろ日本人が好む「考えておきます」「行けたら行きます」「頑張りたいと思います」的な曖昧な表現を避ける方が誤解が生じず正確に職務が遂行できるのかも知れません。

 

*1:Tony Schwartz2015年6月26日号『The Bad Behavior of Visionary Leaders』The New York Times
*2:ヘネシー澄子2004『子を愛せない母 母を拒否する子』学習研究社

 

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