074 セール シーズンに衝動買いをしてしまう貴方へのアドバイス
街はクリスマスシーズンの真っ只中。しかも、これから着れる冬物がセール価格で販売されていて、買物欲が高揚している方も多いことでしょう。
そう言う僕もセールが大好きで、時折衝動買いをして反省をしています。例えば「15,120円 → 9,072(税込)円(40%OFF)」なんてお気に入りの商品を見つけると、9,072円支払うにも関わらず、6,048円をもらったような気分になるから不思議です。
では、なぜこのような気分になるのか?精神神経科学的に言うと「アンカリング効果」の影響だと言えます。アンカリング効果(Anchoring Effect)とは、認知バイアスの一種であり、心理学者のスタンフォード大学のエイモス トベルスキー(Amos Tversky)教授と、このブログにも度々登場する、心理学者であり行動経済学者でもあるプリンストン大学名誉教授ダニエル カーネマン(Daniel Kahneman)教授が発表した、消費者の購買行動に大きな影響を与えている要因のひとつです。
例えば、15,120円のパンツが、通常なら消費者は、製品の品質や利用価値に注目して、価格に見合ったものかどうかを検討して購買行動を行いますが、「通常価格15,120円 → 特別価格9,072円」と表示することで、先に提示した通常価格15,120円という情報がアンカーとなり、9,072円という価格に対して「6,048円値引きされている」という判断がなされ、お買い得に感じられるという心理状態を言います。
価格のアンカリング効果によって、消費者は購買判断の際、性能や品質以上に価格や割引率といった数字に注目するようになり、価格判断は、衝動買いにも大きな影響を及ぼすことが明らかになりました。
では、このアンカリング効果による衝動買いを防ぐにはどうすればいいか?その答えは「アンカーを外すことです」つまり、「15,120円 → 9,072(税込)円(40%OFF)」という表示があるパンツでも「9,072(税込)円のパンツとして価値があるか?」と言うこと、あるいは「そもそも15,120円のパンツとして価値はあったか?」を考えると言うことです。
そして、アンカリング効果の他にも衝動買いを引き起こす心理的作用があります。先日「070「やらずに後悔するより、やって後悔する方がいい」という言葉の精神神経科学的見解」でも書いた、ボストン大学のリサ アベンドロス博士の「やらない後悔より、やった後悔の方が心の傷は小さい」という実験結果の影響です。つまり、ここで買わないと二度と手に入らないと言う心理状態です。その心理状態を誘発するために「残数1点」などの記載もよく見かけます。確かにその商品は「残数1点」でも、類似した商品はその後も手に入らないのか冷静に考えるべきです。
そのように考えると、やはり「クリティカルに思考する」つまり、クリティカル シンキング(critical thinking,批判的思考)が重要になってくるということです。ですから、たくさんの情報を知ると言うこと、セールの時期だけお店に行くと言う行動を改め、セールが終わった直後のプロパー時期からお店に通われることをお勧めします。
また、セールをしないブランドや、セールをしない店舗を選ぶことも衝動買いをしない方法です。セールをしないと言うことは、常に商品の価値を一定に保っていると言うことです。
例えば、高校生たちが制服と共に履くコインローファーの靴ブランド”HARUTA”と言うブランドがあります。おおよそ4,000円〜6,000円が中心価格帯の比較的安価な靴ブランドですが、最近では横浜赤レンガ倉庫やルミネエスト新宿や渋谷モディに直営店を開店させています。メンズで7アイテムしかなくシンプルな品揃えです。下の画像が定番のコインローファーで11,340(税込)円ですが、現物を試着すると値段を遥かに超えるクオリティに驚かされます。
アイテムが少なく、セールもなければ、見切り処分の必要もありませんが、その反面リピート販売が難しくなります。つまり、一定の事業規模までは拡大できますが、それ以上の拡大は見込めないということです。しかし、そもそも少子高齢化が進む社会で、大きな事業拡大が見込めないなら”HARUTA”のような堅実な戦略の方が勝算があるだろうと思うのは僕だけではないでしょう。
衝動買いを防ぐためには、セールの時期だけお店に行くと言う行動を改めることが有効ですが、それができないなら、定番品をプロパーで購入する習慣を身につけることをお勧めします。