013 ガラガラのお店に入ったら、続いてお客さんが入るメカニズム

僕のオフィスの近くに、最近「PEPSI STRONG BAR」というお店ができました。そのお店は、新商品”ペプシストロング ゼロ”の発売を記念したプロモーションのためのお店だそうです。その店頭を通ることが多いんですが、面白いことに気がつきました。それは、混んでいる時と空いている時の差が激しいということです。


お客さんが少ないお店のことを「閑古鳥が鳴いてるお店」なんていいますが、そんなお店に入店したら、続いてお客さんが入店して来たという経験をしたことのある方が多いのではないでしょうか?あるいは、お客さんがいないお店には入りにくいけど、お客さんがいる店なら入りやすいという方も多いのではないでしょうか?後者の場合は、店員さんからの接客サービスが嫌だからという理由もあるでしょうが、じつは、これらの消費者行動には「ミラーニューロン(Mirror neuron)」という神経細胞が影響しています。


1996年にパルマ大学のGiacomo Rizzolatti教授の研究チームが、サル(マカクザル)がエサを取ろうとする際の、脳の下前頭回と下頭頂葉で特定の動きに関わる神経細胞が活動する ことを発見し、さらに、人間(実験者)がエサを拾い上げた時に、マカクザル自身がエサを取るときと同様の活動を示す脳神経細胞(ニューロン)を発見しました。もう少し分かりやすくいうと、サルには他者の行動を見たときに、自分が行動しているかのような反応を示す脳神経細胞があることを発見し、この脳神経細胞をミラーニューロン(Mirror neuron)と呼ぶようになりました。


さらに2000年代になって、ヒトおよび動物の脳や脊髄の活動に関連した血流動態反応を視覚化するfMRI (functional magnetic resonance imaging)という医療検査器機の一般化に伴い、サルと同様にヒトの下前頭回と上頭頂葉でも、被験者が実際に行動する時と他者の行動を観察する時の両方で脳神経細胞が活動を示すことが分かってきました。このことをミラーニューロン システムといい、新生児は生後12ヶ月までに発達し、母親が笑いかけると、赤ん坊も笑い返す、また母親が答えて笑うなどの動作により、新生児が他者の行動を理解することを助けているということも分かってきました。あくびがうつる。笑っている人を見ると、こっちまで笑えてくる。泣いている人を見ると、こっちまで泣けてくる。仁侠映画を見ると、自分が強くなった気がする。料理番組を見ると、急にお腹がすいてくる。誰かがトイレに立つと、こっちまでもよおしてくる。このようなこともミラーニューロン システムが関係しているといわれています。


このように本来ヒトは、他人を真似る神経細胞を内包しているので、学生時代に悪い仲間と連むと悪い行動をとったり、逆によく勉強をする仲間と連むとよく勉強したりするわけです。僕も、読書をしたり、レポートを書いたりする場合に、自宅より研究室や図書館で行なう方が、はるかに効率が上がります。おそらくそれも、ミラーニューロンシステムの影響なのでしょう。


ですから、タイトルの「ガラガラのお店に入ったら、続いてお客さんが入ってくる」という現象も自然なことだといえますし、コンビニが店頭に雑誌コーナーを配置してお客さんがいることを店外から見えるようにしたり、流行りのパンケーキ屋さんやポップコーン屋さんが、あえて通行人から見えやすい場所に行列を配置するのも、ミラーニューロン システムの影響を考慮してのことだと想像できます。また冒頭の”PEPSI STRONG BAR”というお店の混んでいる時と空いている時の差が激しいということも、ミラーニューロンシステムの影響なのでしょう。


このミラーニューロン システムを皆さんのビジネスにどのように生かすか考えると、例えば自分が買える商品を販売している営業マンさんなら「僕も買いました。そして日々使ってみて・・・」なんて使うシーンをお客様に想像していただいたり、飲食店なら従業員にカウンターで賄いを食べてもらうなどの方法が考えられます。でもサクラは、それがサクラだとお客様に分かったときに、お客様からの信頼を失墜しますので、サクラはオススメはできません、その点に注意してご検討ください。


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