119 LCC的発想で、あなたのビジネスは生まれ変わる!
突然ですが、あなたは “Terminal 3″に行ったことがありますか?Terminal 3とは、2015年4月8日に成田空港にオープンした“LCC(格安航空会社)ターミナル”です。
Terminal 1(成田空港駅)、Terminal 2(空港第2ビル駅)は、JR・京成・成田スカイアクセスが直接乗り入れていますが、Terminal 3には鉄道駅はなく、Terminal 2からシャトルバスを利用するか、Terminal 2からのアクセス通路を15分ほど歩く必要のある不便なTerminalです。しかも、クルマを利用する場合もTerminal 3に駐車場がないため、Terminal 2の駐車場から7~8分歩く必要があります。
さらに到着時間についても、LCCはチェックインの締切時間も大手航空会社に比べると早いので20~30分程度は早めにTerminal 3に到着する必要があります。
ところで私は、月に1度は出張に飛行機を使っています。幸い羽田空港からタクシーで約20分位のところに住んでいるので、普段は羽田空港を利用することが多いですが、先日クライアントさまの本社に出張する折に「一度LCCに乗ってみたいのでLCCのチケットをご用意いただけると嬉しい」と、お願いしました。
そんな理由で、初めてTerminal 3を利用しました。そして、その印象はどうだったか?というと「素晴らしい」の一言でした。
先に書いた通り、アクセスに問題があるものの、東京駅や銀座駅から僅か1,000円で、Terminal 3までの直通バスが約10分おきに発車しています。しかも乗車時間も1時間程度と意外と短いです。そして到着場所はTerminal 3の目前です。
さらに館内が素晴らしい。スカイツリーを設計した日建設計さんのデザインセンスは素晴らしく、天井や壁のボードも省略されているが、とてもスタイリッシュなインテリアです。PARTYさんがデザインされた陸上トラックのような歩きやすいゴム製の床面順路案内と、ピクトグラムのUI(User Interface)が良く、とても判りやすく、しかも、座面が広いベンチやオーク無垢材のテーブルなど、置かれているシンプルなファーニチャーはどれも無印良品のものです。
これまでの空港でよくある高くて不味いレストランもなく、広さ680平方メートル、座席数約450席の国内空港で最大のフードコートには、「宮武讃岐うどん」「長崎ちゃんぽん リンガーハット」「フレッシュネスバーガー」「ぼてぢゅう屋台」「TATSU SUSHI」「洋丼屋ONE BOWL」「カフェベネ」と、どこも500円前後のメニューが中心で、しかも、オーダー後待たせないお店がいっぱいです。
さらに、LCCの機内サービスをフォローする意味なのかテイクアウトできる立ち喰い寿司屋さんもあったりと充実しています。驚いたことに、そのフードコートへの持込みも可能らしく至れり尽くせりです。
そして、館内にある大型バナーなどの広告媒体も、クライアントを限定していて、統一感のあるスタイリッシュなクリエイティブばかりです。
そんなユーザーファーストの館内の雰囲気を例えるならIKEAやCOSTCOのようだとでも例えるられるでしょう。行かれたことのない方は「MUJI FURNITURE FOR NARITA AIRPORT Terminal3」 の動画をぜひご覧いただきたい。
私のTerminal3+LCCに対する印象は、UNIQLOやGUなどのファストファッションや、IKEAや無印良品のようなフラットパック(車のトランクに積んで簡単に持ち帰ることができる家具)ブランド、あるいはH.I.S.のような格安旅行会社に似ています。
いずれも、世の中での認知が低い段階では「安かろう悪かろう」と判断されていましたが、先入観のない若者を中心に認知されてくると市場を席巻し、支持していなかったユーザーを置き去りにしてきました。
ハーバード大学歴史学博士で一橋大学の経営学者である米倉誠一郎教授から「イノベーションを起こしつづける“ピーチ流”に迫る」というタイトルで、Peach Aviation株式会社の井上慎一CEOをゲストに迎えセミナーを開くとご案内をいただきましたが、そこには「LCCはまさにアジア商圏を根底から大変革するイノベーションです」とありました。
Terminal3+LCC=「安かろう悪かろう」と判断しているユーザーは、過去に置き去りにされる時代になるだろうと感じます。アパレル業界や旅行業界を代表する企業が新旧入れ替わったのと同様にエアライン業界も変化することでしょう。
ところで、皆さんが東京に住んでいると仮定して、九州まで行く必要があれば、新幹線で行きますか?飛行機で行きますか?多くの方は「飛行機で行く」とお答えになるでしょう。そして、その理由は「速いから」という方が多いでしょう。
大手航空会社の多くには、First・Business・Economyといったクラスがあります。各社ルートによって一概にいえませんが、その価格は、Firstの半額程度がBusiness、Businessの半額以下がEconomyというほど価格に差があります。つまり、少なくともEconomyの4倍以上が、Firstということになります。エアラインやルートによっては更に差がある場合もあります。
先程の質問に対して「速いから飛行機で行く」とお答えになった方に2つ目の質問を差上げたいのですが、飛行機を選ぶ理由が「速い」なら、料金が高いFirstやBusinessを選ぶ理由は何でしょうか?FirstやBusinessが、Economyよりも速く目的地に着くのでしょうか?
当然答えはNOですが、FirstやBusinessには価格に見合うだけの質の高いサービスという付加価値があります。つまりFirstやBusinessを選ぶ方は、飛行機を選ぶ「速い」という理由と、サービスのクオリティーという2つの理由を複合的に判断し、Economyを選ぶ方は「速い」という理由だけで判断しているのかも知れません。だとすると「速い」という「本質的な価値」でエアラインを選んでいるユーザーは、大手航空会社のEconomyよりLCCを優先するでしょう。
そう考えると、この先大手航空会社のEconomyは厳しい状況になる可能性が高いでしょう。この「大手航空会社のEconomy」を一言で表現すれば「中途半端な立場」となってしまったといえます。
多くの業界において、この「中途半端な立場」になっている企業が多くあります。もし、あなたの会社がその「中途半端な立場」だったとしたら、アパレル業界や旅行業界と同様に淘汰されることになるでしょう。
そうならないために、今こそユーザーが求める「本質的な価値」を極限まで高め、「本質的な価値」ではない価値に要しているコストを削減する”LCC的発想”でビジネスを変革されることをお勧めします。