116「ひとの嫌がる仕事をすると儲かる」は間違いです!
経営者の方なら誰しも「3K」という言葉を聞いたことがあるでしょう。きつい・危険・汚い仕事という意味の言葉です。そして「別の3K」を加えて「6K」という言葉が新たに生まれました。その「別の3K」とは、給料が安い、休暇が少ない、格好悪いです。土木、建設現場、産廃、看護、といった職種がこれに該当するようです。*1
きつい・危険・汚い・給料が安い・休暇が少ない、格好悪い・・・これらの業界・業種は「人気はないが儲かる」といわれていた時代がありました。しかし現在は、そうとも言えない時代になりました。
話は変わりますが、パナソニック(旧社名:松下電気器具製作所、松下電器製作所、松下電器産業)を一代で築き上げた経営の神様である松下幸之助先生が残したこんな言葉があります・・・
「人を育てるということは、企業経営者として、まぎれもなくもっとも大切なことの一つである。というより、それがすべてだといってもいいほどのものだと思う。人をうまく育てられるかどうか、その一点によって、企業が大をなしていくかどうかが決まる。それが分かれ道である。そのことは誰もが知っていながら、さてこれを実現するとなると、これほどむずかしいこともまた少ない。資本をつくるよりも、人を育てることのほうが、はるかにむずかしい。」*2
・・・この文中に「その一点によって、企業が大をなしていくかどうかが決まる」とあります。つまり、人を育てられれば企業を大きくでき、反対に、人を育てられなければ企業は小さくなるとも解釈できます。
当然ながら、人を育てようとなると、それ以前に育つ人を採用しなければなりません。現実に3Kあるいは6Kの仕事では育つ人を採用することは困難なのが現状でしょう。弊社のクライアント様でも6Kに含まれる業界・業種の経営者様は、ほぼ例外なく「採用対策」として弊社にご相談に来られます。
職場環境や福利厚生にお金を投じても結局は「給料を上げるしかない」といわれ、人件費の高騰が原因で減益傾向にあるというお話をよくお聞きします。つまり「ひとの嫌がる仕事をすると”儲からない”」といわれます。
とはいえ、それらの仕事を止めて業務転換するというのも容易なことではありませんし、それらの仕事も社会から必要とされていることには違いがありません。
大脳生理学と心理学に基づく科学的なメンタルトレーニングの研究を行っている西田 一見氏は、著書『脳から変えるNo.1社員教育』の文中で、以下の通り書いておられます・・・
男性であれば「カッコいい」、女性であれば「素敵」と呼ばれるようなリーダーには、多くの部下が憧れ、ついて来ます。それは、「カッコいい」「素敵」というキーワードが、若者の価値観で重要な位置を占めているからかもしれません。
・・・これも逆にいえば「カッコいい、素敵」と呼ばれ”ない”リーダーには、若者はついて来ないと解釈できます。つまり採用が難しいということです。そう考えると、6Kの仕事をする経営者の選択肢は、❶ 6K以外の業界・業種に業務転換をする。❷ カッコいい、素敵と呼ばれるリーダーになる。という2つが考えられます。どうですか?このブログをお読みの6Kの仕事をする経営者様は、どちらかの選択肢を選択できるでしょうか?
もし、そのいずれの選択肢も不可能という場合は、次の西田 一見氏の言葉が参考になるのではないでしょうか・・・
「未来に対して明確な夢や目標を持ち、その実現を信じることができれば、みんな前向きに仕事に取り組むことができる」
・・・つまり、新たな選択肢として、❸ 未来に対して明確な夢や目標を持ち社員と共有する。ということが考えられます。こちらも簡単なことではないと思いますが、これさえできないようであれば、さっさと廃業した方がいいと私は思います。
採用が難しいのは6Kの業種・業界に限らないお話ですが、採用が難しい6Kの業種・業界は、今や”儲からない仕事”になりつつあります。”人材不足倒産”が現実になっている今日、6Kの仕事をする経営者様にとっては「判断の時」だと私は考えています。
*1:知恵蔵編集部(2003)『とっさの日本語便利帳』株式会社 朝日新聞出版
*2:松下幸之助(1993)『松下幸之助経営語録』PHP文庫
*3:西田 一見(2015)『脳から変えるNo.1社員教育』現代書林