017 とっても残念”じゃない” ◯◯大学◯◯講師

以前、このBlogで「009 とっても残念な ◯◯大学◯◯教授」という記事を書きました。今回はその逆で「とっても残念じゃない」つまり「とっても素晴らしい大学講師」のお話について書きます。

 

ご存知の通り、大学生生活は概ね18歳から始まりますので、大学生の半数近くは未成年ということになります。しかし、大学院、ましては社会人大学院となると成年であり、教授や講師のなかには、学生や院生とお酒を飲みに行く方も珍しくありません。さらに、その光景をFacebookなどのSNSで拡散される方々もいらっしゃいます。その行為自体に問題はないと思いますが、その時期がいつなのか?ということについて慎重に考えるべきかも知れません。

 

前回のブログでも書きました通り、大学の教授や講師のお仕事のなかには、学生や院生の評価という大切な仕事があります。シラバスを見ると、試験◯◯%、レポート◯◯%、受講態度◯◯%、出欠◯◯%、と項目や配点について講義ごとに記載されています。当然ながら、そこに「飲み会への出席」があるのを見たことがありません。ところが、実際に、評価を判断する前に教授や講師と学生や院生が飲み会に行くと評価に影響をするというお話をします。

 

「ザイアンスの法則」という言葉を聞かれたことがあるでしょうか?または「ザイアンスの単純接触効果」ともいわれますが、ポーランド生まれのロバート・ボレスワフ・ザイアンス(Robert Bolesław Zajonc)が、1968年に発表した論文で「人は、会う回数が増えれば潜在記憶が増し、印象評価に誤って帰属される」ということを知覚的流暢性誤帰属説で説明しました。教授や講師と学生や院生の飲み会に例えて表現すると「飲み会の参加率が多い学生や院生は、教授や講師に良い評価を与えられる」ということ、さらに、FacebookなどのSNSで、教授や講師のTimelineに頻繁に登場する学生や院生もまた、擬似的な接触回数を増やすことになるので、良い評価を与えられるということがいえます。

 

こう書くと「いやいや僕は、飲み会の席のことと評価はキッパリ分けています」という方もいらっしゃることでしょう。しかし、ロバート・ボレスワフ・ザイアンスの論文にもある通り「潜在記憶」への影響、つまり無意識領域のお話であり、意識領域のお話では語ることができないということなのです。さらに、同氏が、1979年にアメリカ心理学会から優秀科学功労賞を贈られた論文「Feeling and Thinking: Preferences Need No Inferences(感覚と思考:好き嫌いに理屈は要らない)」には、情緒と認知の機構は互いにほとんど独立しており、情緒の方がより強力で、優先されるのだ、という議論を展開しました。これらのロバート・ボレスワフ・ザイアンスの書々の論文を総合すると「人は、会う回数や時間が増えると、潜在的に”好き”になり良い評価を与えてしまう。そして、それは意識領域の認知とは独立した機構で働いている」ということになります。

 

僕が修士時代に学んだ教授や講師の中には、お酒の好きな先生が多数いらっしゃいましたが、その中で「評価を終えるまでは院生と飲みに行かない」とおっしゃる先生がいらっしゃいました。ロバート・ボレスワフ・ザイアンス的な考え方に基づくと、とても公正な先生といえるでしょう。このような先生を僕は素晴らしい先生だと感じますし、大学講師だけではなく、裁判官などのお仕事にも適任かとも感じます。「教授や講師と学生や院生が、お酒を飲みに行くことで親睦が深まり、興味が深まることにより教育効果が高まる」と主張される方もいらっしゃるかも知れませんが、「ザイアンスの法則」は、教育効果についてではなく、評価についての概念なので、論点をお間違いにならないようにお願いいたします。

 

では、営業マンさんや販売員さんが、この「ザイアンスの法則」をどのようにビジネスに取り入れるか?と言うと、単純に接触回数を増やすということです。例えば、本当は一度で説明できることを二度に分けて訪問回数を増やして説明するとか、来店するだけでポイントが溜まるというポイントカードを作って来店頻度を高めるなど。また、FacebookなどのSNSで自分の顔を露出させることも疑似接触回数を増やすという意味では有効でしょう。さらに、他人の投稿と区別されやすいように、毎回同じポーズで撮影した画像を投稿するとさらに効果を高めることになります。あなたのお仕事に「ザイアンスの法則」がどのように活かせるか検討してみてください・・・

 

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