040 起業家を創出するために私たちにできることは何か?(4回連続 ①)
このブログは「ニューロマーケティングってなんだろう?」というタイトルにも関わらず、ニューロマーケティングの核心に触れることはあまり書いてきませんでしたが、もし、ニューロマーケティングにご関心があってこのブログにたどり着いた方がいらしたら、申し訳ございません。そして、今回もニューロマーケティングから離れたテーマです。
さて、皆さんは「ご自分が生きている意味やご自身の使命」などを考えたことはありますか?僕は、自分の使命を「雇用の創造」だと考えてきました。僕は約18年前に起業をしましたが、以降いろいろな仕事を多くのお客様と続けてきました。その間、社会に貢献できたかと聞かれると返答に困ります。しかし、ハッキリいえることは、その18年間、雇用の創造は続けてきたし、お給料をお支払いすることを途絶えたことは一度もありませんでした。サラリーマンの方からすると当たり前のことでしょうが、金ナシ、コネナシで事業をはじめたアントレプレナーにとっては簡単なことではありませんでした。
ところで、1991年のバブル経済崩壊以降、日本の新卒者の求人倍率は年々下落し続ける「就職氷河期」に僕は起業しました。雇用問題はその時代の社会問題でした。しかし、時代は進み、来春2016年3月卒業予定の大学生・大学院生対象の大卒求人倍率は1.73倍と、前年の1.61倍より+0.12ポイント上昇し、全国の民間企業の求人総数は、前年の68.3万人から71.9万人へと3.6万人増加しました(対前年増減率は+5.4%)。一方、学生の民間企業就職希望者数は、前年42.3万人とほぼ同じ水準の41.7万人でした(対前年増減率は-1.5%)。*1 という報道がありました。つまり、就職希望者数はあまり変わらず、求人倍率が上がるということは「人材不足」の傾向にあるといえます。わずか18年の間に「雇用不足」という社会問題が「人材不足」という真逆の社会問題に発展したといえます。
15年版中小企業白書によると、人材を確保できていない中小企業が4割近くに上ると指摘されています。恩師である株式会社セレブレインの高城幸司社長は、東洋経済オンラインの記事の中で「会社の人材が大きく流出しているのに新規採用がうまくできなかったり、内部の人材が多忙で疲弊しきっているような、倒産の予備軍のような会社を多く見かけます*2」と論じておられます。このように、現在は人材不足倒産時代に突入しているのかも知れません。つまり、僕の「雇用の創造」という使命が、使命とはいえない時代に至っているのかも知れません。
その一方で、オックスフォード大学で人工知能=AI(Artificial Intelligence)の研究を行うマイケル A オズボーン(Michael A. Osborne)准教授が、2013年に発表した論文『THE FUTURE OF EMPLOYMENT: HOW SUSCEPTIBLE ARE JOBS TO COMPUTERISATION?*3』において、各職種の労働関連のデータに基づいて試算したところ、医師や小学校の先生は残るが、電話営業やタクシー運転手などは人工知能に代替されると報告したように、AIの急速な発展により、近い将来多くの職業がロボット化され、多くの失業者を産むだろうという意見もあります。そうなれば、僕の「雇用の創造」という使命が、再び使命といえる時代に至るのかも知れません。バブル崩壊以降、繰り返されてきた「雇用不足」と「人材不足」という社会問題が、今後も繰り返されるのかも知れません。
さしあたり「人材不足」の状況にある今日、高齢者や育児中の女性を活用するサービスや、人材不足を解消するAI技術の開発を事業ドメインとするベンチャー企業が相次いてローンチする様子を見ていると、これらのサービスも数年後、数十年後には無用なサービスになり得る可能性があるのだろうと感じます。しかし、これらの仕事は現在起こっている社会問題を解消する社会的貢献度の高い仕事であることには疑いのないことだと思います。そんな、社会的貢献度の高い仕事をするアントレプレナーを創出するために、私たちができることは何なのでしょうか?・・・「起業家を創出するために私たちにできることは何か?(4回連続 ②)」につづく。
*1 リクルートワークス研究所 発表『大卒求人倍率調査(2016年卒)』より一部引用
*2 東洋経済オンライン 2015年08月03日号 株式会社セレブレインの高城幸司社長著『まさかの「人材不足倒産」がやってくる!深刻度を増す日本企業の採用難』
*3 Michael A. Osborne 2013『THE FUTURE OF EMPLOYMENT: HOW SUSCEPTIBLE ARE JOBS TO COMPUTERISATION?』