047 4Pや3Cなどのマーケティングフレームワークを用いても成功しない理由
私は大学時代に商学部でマーケティングを学びはじめ、修士でもマーケティングを中心に学んだ。しかし、世の中に”マーケティング コンサルタント”と自称するヒトが溢れるほどいる現代において、これまでのマーケティングから正しい戦略、戦術が導けるのであれば、なぜ世の中は売れない商品で溢れているのか?という疑問に到達し、これまでのマーケティングに対してネガティブに考え、その答えがニューロマーケティングにあると信じ、ニューロマーケティングの研究をはじめた。
話は変わるが、先日、とある大学院のカンファレンスに参加させていただき、素晴らしいご経歴をお持ちの先生のご講義を聴講させていただいた。講義の内容はマーケティングに対するリテラシーの低い方を対象とした講義だった。こういった講義で「4Pの4つのPはなんですか?」だとか「3Cの3つのCはなんですか?」と、前列に座る学生に質問する場面を見かけることがある。そして、その回答が明快でない場合に「これが答えれないようではお話になりません」的なことをいう講師を見かけることもある。
そんな場面でいつも思うことは、クリエイティブスキルが重要な現代のマーケティングにおいて、いまだに記憶的学習を強要するのか?と疑問を感じる。4Pでも3CでもWEB検索をすれば、1秒〜2秒でその詳細は判る。そんなことに長期記憶をメモリーする大脳新皮質の貴重な領域を使う必要があるのだろうか?マーケティングストラテジーなどを検討する場合にWEBに繋がらないところで作業をするとは考えづらく、そんなことはサクッと検索すれば良いと思う。大切なことは「マーケティングフレームワークの基本的な概念に4Pや3Cがある」ということだけを覚えていれば良いのではないだろうか?そして、この日の先生は素晴らしい先生だったので、そんな質問はなかった。
ところで、マーケターやマーケティングコンサルタントは自身が得意とするマーケティングフレームワークを持っていることが多い。そして、その得意とするマーケティングフレームワークが如何に信憑性が高いかを論じる。確かにそのひとつひとつのマーケティングフレームワークは信憑性が高いことは納得できる。しかし、そのマーケティングフレームワークに入力するヒトが、経営者などの上位者か、販売担当者のような下位者か、あるいは社外のコンサルタントであれば、全て違った入力をするだろう。
この状態を例えるなら「どんなホテルが良いホテルだと思いますか?」というアンケートを、出張で宿泊するビジネスマンと、旅行で宿泊するファミリーと、記念日に宿泊するカップルに向けて行っているようなものだと、私は感じる。おそらく全く違った回答が集まり、厄介なことにそれぞれの立場で正論を回答してくるだろう。回りくどい表現になったが、私が感じていることは、4Pや3Cが適切なマーケティングフレームワークだったとしても、その入力方法に適切なフレームワークがなければ意味がないということである。
先日のとある大学院のカンファレンスでご講義いただいた素晴らしい先生に、私は「マーケティングフレームワークに入力するヒトが違えば答えは変わりますが、どうすることが最適か先生のご意見を伺いたい」と質問をぶつけた。そして、その回答はなんと「総合的に判断をする」というものだった。先ほどのホテルの宿泊者へのアンケートの例えが適切であるとするなら「ビジネスマンとファミリーとカップルの意見を総合する」という解釈になるのかも知れない。そんな入力をして出てきた答えに、マーケティング的価値はあるのだろうか?
大企業は、マーケティングの部署を設け、多くのマーケターを雇用しているにも関わらず、死に筋商品を数多く発売してしまう理由がここにあるのではないだろうか?じつは、このマーケティングフレームワークへの入力方法こそが、マーケターやマーケティングコンサルタントの”秘伝の技”であり、他人には明かしたくない、お金を産む部分であるという仮説はいかがだろうか?