057 ディープラーニングができない社員は自ら組織を去ってください
Soft Bank社のPepperくん登場により、ロボットが身近な存在になりました。そして、AI( Artificial Intelligence)も、もしかすると年末の流行語大賞にノミネート(流行語大賞ではなく”ノミネート”です)される可能性もあるくらい一般的な言葉になりました。040 起業家を創出するために私たちにできることは何か?(4回連続 ①)では、オックスフォード大学でAIの研究を行うマイケル A オズボーン(Michael A. Osborne)准教授が、2013年に発表した論文『THE FUTURE OF EMPLOYMENT: HOW SUSCEPTIBLE ARE JOBS TO COMPUTERISATION?』において、各職種の労働関連のデータに基づいて試算したところ、医師や小学校の先生は残るが、電話営業やタクシー運転手などは人工知能に代替されると報告したと書きました。
2015年7月30日開催のソフトバンクの法人向け大規模イベント「SoftBank World 2015」の基調講演で、孫正義さんは、この職業消滅に対して、アジア人は「自分の仕事がなくなる」とネガティブに語るヒトが多く、欧米人は「自分が仕事をしなくてよくなる」とポジティブに語るヒトが多いといいました。じつにユニークな話ですが、とても納得できるお話です。さらに、孫正義さんは、Pepperくんとそれまでのロボットの相違点はディープラーニング(Deep Learning)にあると語りました。
では、ディープラーニング(Deep Learning)とは何か?Harvard Business Review2015年11月号では人工知能を特集し、その中で東京大学大学院 工学系研究科 松尾豊 准教授が「ディープラーニングで日本のモノづくりは復権する」という記事を掲載されており大変参考になった。松尾豊 准教授の記事によると、ディープラーニングをベースとするAIの技術発展には、認識・行動・言葉の3つのフェーズがあると論じられています。
その第一フェーズである「認識」は、2007年頃から研究が始まり、現在は「マルチモーダルな認識」の段階に到達している。そのマルチモーダルな認識には、感情を理解し、行動を予測し、環境を認識することが含まれているそうである。一言でいってしまえば「深層学習」であるが、そういわれてもなかなか判りにくい。議論が必要な概念だが、私なりの概念は、ロボット自身の行動によってヒトがどういう感情を示すかを認識し、ヒトが好意を示す行動を記憶し、その行動を自身が再現する。そのルーティンワークを繰り返すというような自己学習機能と解釈しています。
例えば、オフィスにロボットがいたとして、出勤するとスタッフに明るい声で「おはようございます、今日はいいお天気ですね!」という、すると挨拶されたヒトは、ニコッと笑顔になる。そのヒトの笑顔を認識して、「この行動はヒトが喜ぶ行動なんだ」と記憶し、翌朝から「おはようございます。今日はいいお天気ですね!」と再現するようになる。逆にロボットが無言でいると、スタッフが「「おはようございますといいなさい」と不機嫌な顔をすると、不機嫌な感情を認識して、「この行動はヒトが怒る行動なんだ」と記憶し、翌朝から同じ行動をしなくなる。しかも、時間が経過するほど、その記憶は増えてゆく。つまり、時間が経つほどヒトに好かれるようになるというわけです。
どうですか?貴方の職場に、ディープラーニングができない社員はいませんか?自ら「認識」を率先して行なわず、上司が嫌な顔をしているにも関わらず、上司の感情を認識できず、またそのことを記憶できず、同じようなことで上司とぶつかるスタッフ。
ディープラーニングの機能が備わっていないロボットなら、同じようなことで上司とぶつかるスタッフと同様のことが起こります。そもそも、ディープラーニングの機能が備わっていないロボットには、どんなに時間をかけても「マルチモーダルな認識」は不可能です。では、ヒトの場合はどうでしょうか?AIは日本語で「人工知能」といわれる通り、ヒトの脳の機能を再現しようと研究開発されています。つまり、AIとヒトの脳は時間の経過とともに同一化が進んでいます。
ディープラーニングの機能が備わったロボットが、初任給の倍額程度で調達できる現在において、ディープラーニングができない社員を組織は必要とするのでしょうか?ディープラーニングができない社員は、自らその判断を受け入れなければならない時代が来たのではないかと、私は感じています。