058 OJTを進めるには報・連・相ができる環境が前提です
「報・連・相」と聞くと懐かしいと思うのは私だけではないでしょう。株式会社産学連携機構九州(九州大学TLO)総合研究部門 青島未佳 部門長の「どのようなリーダーとなるべき?」という記事を読んでいて、興味深い一節がありました。
『グローバル化・多様化する今日に求められるリーダーシップは、以前とは異なってきています。これまでのように、日本人・男性・正社員といった同質集団で構成されたメンバーが、ある程度決められた業務手順に従って報・連・相を適切に行うことで成果を出せた時代から、多様な人材で構成されたメンバーが、おのおののチームで新しい方法・知識を創出することが必要な時代に変わってきています。』
・・・なるほど、今の時代では「報・連・相」では結果は出せないのか?私はこの一節に違和感を感じました。その理由は、報・連・相はメンバーからリーダーに向けた一方向の行動だと捉えていると感じたからです。
確かに「報・連・相」=報告・連絡・相談はメンバー(部下)からリーダー(上司)に向けた言葉ですが、リーダー(上司)からメンバー(部下)に向けて考えると、報告は命令が前提、連絡は解説が前提、相談は援助が前提になっています。と、ここまでご存知の方は多いと思いますが、ではなぜ双方の報告&命令、連絡&解説、相談&援助が上手く行かないのか?
その理由は、お互いに悪いニュースを伝えることで自分への評価が下がったり、不機嫌になることを避けたいという意識が原因だと考えられます。では、この問題を解消する方法はあるのでしょうか?
カリフォルニア大学リバーサイド校で心理学を学ぶ博士課程の学生、アンジェラ レッグ(Angela Legg)氏とケイト スウィーニー(Kate Sweeney)氏が共同で行った研究には、この問題を軽減するヒントがありました。
実験によると、悪いニュースを先に聞きたいという人が75%超と圧倒的多数を占めており、「どうせ悪いニュースを聞かされるのなら、さっさと聞いてしまった方がいいという気持ちあるのだろう」とレッグ氏は分析しました。これとは対照的に、伝える側は65~70%が良いニュースを先に、悪いニュースを後に話したいと回答しました。
つまり「伝える方には悪いニュースを先に伝えたいという人は少なく、悪いニュースを聞くのを先延ばしにすることが、相手をより不安にするということに気づいていない」と結論づけました。
そこでレッグ氏は「サンドイッチ アプローチ」という伝達方法を考えました。これは、悪いニュースをサンドイッチの具のように良いニュースの間にはさんで伝えるという方法です。例えば、「新規客は先月より多かった。しかし、売上は下がった。でも客単価は少しづつ上がって来ている」といった伝え方です。
相手の気分を良くしたいのなら有効な方法ですが、悪いニュースが軽く扱われ、聞き手を混乱させてしまうデメリットがあると指摘しています。しかし「報・連・相」が進むなら有効な方法だと私は思います。
部下の成長を望むなら「任せる」ことだといわれますが、「任せる」ためには、報告&命令、連絡&解説、相談&援助が前提になるだろうし、それを進めるために「サンドイッチ アプローチ」が効果的なら積極的に導入するのが望ましいと私は考えます。