069 カスタマー ジャーニーで考えるマーケティング アプローチ
マーケティングの分析方法には、多くのアプローチがあります。その代表格であるSWOT分析も実践的な方法ではないと、僕は考えています。なぜそう思うかは、また後日ご説明するとして、そのような多くのマーケティング分析の中で、最近僕が頻繁に使うのが「カスタマー ジャーニーで考える」と言う分析方法です。
“カスタマー ジャーニー(Customer Journey)”と言うマーケティング用語を聞いたことのない方も「Customer=顧客、Journey=旅」と言う単語から何となく想像ができると思いますが、顧客が商品の購入やサービスの申込みと言う最終的な意思決定を経て、さらに購入や申込みの先にどんな行動や意識が伴うかをプロセスで考える概念です。そして、そのプロセスを可視化したものが「カスタマー ジャーニー マップ(Customer Journey map)」です。
このカスタマー ジャーニーは、特にWEBマーケティングで導入されることが多く、その理由は、PC・スマートフォン・タブレットといったデバイスの多様化や、ホームページ、ランディングページ、SNS、ブログ、メルマガ、SMS、プッシュ通知とWEBメディアの多様化によって、顧客に対するアプローチも、顧客からのアプローチも一人ずつ違ういわゆる” One 2 One”の状態になって来たことが原因だと考えられます。
どのデバイスで、どのメディアを起点として、どのデバイスの、どのメディアでコンバージョン(CV,最終的な成果)が得られるか?をマップ化して行くと、驚くほど多くのプロセスがあることに気づかされます。古典的なマーケティング分析の方法では、顧客とのタッチポイントが抜け落ち、気づかないことも、このカスタマー ジャーニー マップを作成することで、顧客とのタッチポイントが抜け落ちることなく分析することが可能になります。
このようにWEBマーケティングにおけるカスタマー ジャーニーの有効性は多くの場面で語られていますが、僕はリアル マーケティングにこそカスタマー ジャーニーが有効だと考えています。例えば、一般的な小売店のケースを考えると、WEBマーケティング以外にも、TVやラジオのCM、新聞や雑誌の広告、折込広告、街頭看板、ダイレクトメール(DM)、ノベルティ配布・・・と多くの顧客とのタッチポイントが考えられます。
さらに店舗に来店して、ファサードでウィンドウ ディスプレーを見る、実際に商品に触れる、販売員から商品説明を聞くと言う次のフェーズのタッチポイントが考えられます。そして、購入すると言う意思決定後も、レジに行って支払いをする、会員入会の勧誘を受ける、包装を待つ、お客様を見送ると言った次のフェーズのタッチポイントが考えられます。
さらに、お客様が帰宅して、包装を開いて商品を取り出す、実際に商品を試す、その感想をSNSなどに投稿するなどの次のフェーズの商品とのタッチポイントも考えられます。そこから、再び再来店していただく間にもDMやメルマガなどのタッチポイントも考えられます。
このように、顧客とのタッチポイントは驚くほど多く存在し、それをマップ化することで、各ポイントでの新たなマーケティング戦略が生まれます。その一つひとつのタッチポイントにおける戦略を、コストまたはリードタイムを軸としてランキング化し、それを考慮しつつカスタマー ジャーニー マップの初期段階から順に導入して行くことを僕はお勧めしています。これは、先日のブログ「068 いまさら聞けない”KPI”と”KGI”の導入と2つの意味の違い」のKPIにも通じる思考です。
売上や来店者数の低下に対して、漠然と考えていると、多くの戦略を思いつきますが、問題が潜むタッチポイントを見落とす可能性も高く、どの戦略から順に行うのか、各戦略の効果よりコストやリードタイムだけで考えがちです。しかし、カスタマー ジャーニー マップの初期段階から順に行うことによって、効果が可視化できます。顧客単価を上げてから、来店者数を増やすことを考えるより、先ずは来店者を増やし、次に顧客単価を上げると言うプロセスの方が効果が出やすいことをご想像いただけるのではないでしょうか?
「インターネットはホームページだけ」と言う方でも、御社の顧客がどのようなプロセスを経て、御社の商品やサービスを購入し、またリピートしていただけるまでのアプローチをカスタマー ジャーニー マップの作成を通して、再確認されることをお勧めします。