128 資格・検定を取得すれば本当にビジネスの場面で有利になるのか?
就職・再就職・転職の場面では「資格」を持つことで優位性が高まると言われていますが、実際に資格や検定がビジネスの場面で有利になるのか?考えてみたいと思います。
日本国内における「資格」には、30以上のジャンルがあり、資格の数は国家資格だけで1,200種類以上、民間資格も数えるとその数は3,000種類以上になるそうですが、大きく分類すると、国、または国からの委託を受ける機関が行う「国家資格」と、国家資格、民間資格の中間的な資格である「公的資格」と、民間の団体や企業が、独自の基準によって認定している資格である「民間資格」があります。
医師免許や弁護士資格のように国家資格には難しい資格が多いですが、その分有資格者には国から地位、職業保障を受けていることになるので、社会的に信用度の高いものです。次に公的資格は、商工会議所法に基づき日本商工会議所や各地商工会議所が主催する検定試験などで、国家資格に準じているため能力を高く評価され就職や再就職にも有利になる資格といわれています。最後に民間資格は、TOEIC・TOEFL・臨床心理士など法律によって制度が確定した資格ではなく、国家資格と同等に高い知識を必要として世間から広く認知されている資格もある反面、認知度や評価の低い資格もあります。
例えば、経営者に関わる資格を例にとると、中小企業診断士が国家資格であるのに対し、MBA(経営学修士または経営管理学修士)は資格ではありません。MBAは経営の資格だと思っている方も多いですが、MBAは資格ではなく学位です。いずれも経営に関わる知識習得の証と考えれば近しい内容ですが、中小企業診断士が主に中小企業への経営診断や助言を目的としているのに対し、MBAは主に大企業の経営全般を目的としている違いがあります。
またMBAといっても、アメリカなどのMBAと日本のMBAはカラーが異なります。参考までに世界を代表するビジネススクールである「ハーバード ビジネス スクール(HBS)」のWEBサイトと、国内MBA大学院ランキング1位 *1 の「慶應義塾大学大学院経営管理研究科(KBS)」のWEBサイトを比べると感じていただけると思います。
ところで私事で恐縮ですが、私は国内のMBA(経営管理学修士)ホルダーですが、ビジネスマネージメントに関する知識がどれくらいあるのか知りたくて、東京商工会議所が主催している公的資格の一つである「ビジネスマネジャー検定」を受験してみました。
この「ビジネスマネジャー検定」のWEBサイトを見ると、『ビジネスマネジャー検定試験は、マネジャーとして活躍が期待されるビジネスパーソンに対し、その土台づくりのサポートを目的とし、「あらゆるマネジャーが共通して身につけておくべき重要な基礎知識」を効率的に習得する機会を提供します。』*2 とあります。
また、カテゴリーは、コミュニケーションや人材育成、チームビルディングなどを学ぶ「人と組織のマネジメント」、事業管理や課題に応じた戦略の立案などを学ぶ「業務のマネジメント」、リスク管理やコンプライアンス、メンタルヘルスやハラスメントの職場管理を学ぶ「リスクのマネジメント」に分類し、ビジネスの実践の場で必要不可欠な知識や情報を網羅しています。*2 とあります。
2015年度の試験結果を見ると、14,881人の受験者に対して、7,852人の合格者と56.6%の合格率で比較的難しい試験なのかと予想していましたが、実際にMBAホルダーからすると、難易度の高い試験ではなく一発で合格することができました。
しかし「ビジネスマネジャー検定」の受験で得るものがなかった訳ではなく、人と組織・業務・リスクとそれぞれのマネジメントについて体系的に復習できたことは自分にとって大きな収穫でした。
正直なところ、経営者であればMBAホルダーになっても、ビジネスマネジャー検定に合格しても評価して下さる方は少ないです。しかし先に書いた通り、経営について体系的に学んだことにより自分自身に「自信」がついたことは「ビジネスの場面で有利になった」といって良いと感じています。
経営者の立場で語れば、資格・検定を取得すれば就職・再就職・転職の場面で優位性が高まるか否かは正直大きな差はないと思います。しかし、自分自身に自信を持った人間がどれほど有利か考えると、その優位性は言うまでもありません。
国家資格は少ないですが、幾つかの公的資格と民間資格によって与えられた自信を考えると、これから就職・再就職・転職の場面を迎える方には、ぜひ資格・検定の取得をおススメします。
*1 2014年調査『通ってみたいビジネススクール』日経・日経HRが実施
*2 東京商工会議所『ビジネスマネジャー検定試験公式サイト』より