008 少数派のお客様との関係を壊さないための注意点
日本でも2008年頃からSNSが一般的に使われるようになりましたが、僕もその頃からfacebookやTwitterを使うようになりました。しかし、ごく稀にSNS上で自分自身が大きく傷つけられることがあります。他人から見れば何でもない些細なことに見えても、本人が自分自身に自信がないことについてネガティブな表現をされると、大きな精神的傷害を受けてしまいます。
このように細かい部分にこだわる、感情表現が困難といった特徴を持つ症状の発達障害のひとつに、ウィーン生まれの小児科医であるハンス・アスペルガー (Hans Asperger)の名をとって、アスペルガー障害または、アスペルガー症候群(シンドローム)という発達障害があります。知能は平均以上で、学校の成績も良かったアスペルガー症候群の人が、職場では適応障害を起こすこともあります。例えば、あいまいな指示が理解できない、白黒はっきりつけたがるなどのコミュニケーションの特異性などです。そして、アスペルガー症候群は性別との相関関係があり、男性は女性の4〜5倍程度多いという研究結果もあります。さらに、 G.R.テロングとJ.T.ダイアーはアスペルガー症候群の遺伝性を発見しました。
アスペルガー症候群は、興味の対象に対してきわめて強い偏執的ともいえる水準での集中を伴うことがあり、社会一般の興味や流行にかかわらず、独自的な興味を抱くケースが見られますが、その興味の対象が突然変わる場合もあります。また、順序だったもの、規則的なものはアスペルガー症候群の人を魅了し、論理的に話し合いのできない感情的な人間を排除する傾向もあります。日本小児精神神経学会認定医の宮尾 益知 博士は、アスペルガー症候群の感覚面での特徴として、ちょっとした態度や言葉で著しく傷つき、それがトラウマとなりやすい、過去のトラウマから、第三者にとってはちょっとしたことでもフラッシュバックを起こして大騒ぎをする、大変まじめで、それゆえに壊れやすいという見解を出しています。
京都大学の神経化学研究チームは、アスペルガー症候群の人は対人相互作用などに強く関係する上側頭溝・紡錘状回・扁桃体・内側前頭前野・下前頭回などの脳全体に占める割合が、通常人と比べ相対的に低いことがわかったと発表していますが、逆にいえばその他の脳の部位の割合が高いともいえるので障害と片ずけられません。また、症候群という表現は、アスペルガーの人は障害者(異常)で、その他の者は定型発達者(正常)ではなく、特徴の見かたを変えると、客観的で、事実を正確に理解して表現することに長けているともいえます。「言葉を額面どおりに受け取る」や「些細なことにこだわる」という特徴も「厳正に規則を守る」と言い換えることができ、学術のように順序だったものや規則的なものに興味を持てば、才能を開花させることも可能です。このように、アスペルガー症候群は、あくまでも少数派な性格を持った人というだけであり、決して精神障害ではない。障害でないゆえに、定型発達者と同様、知性・理性共に有しており、 反社会的なことを反社会的だと認識する能力もしっかりと持っています。その根拠として、米国の学会などでは、アスペルガー症候群そのものは障害ではなく、 治療すべき対象ではないという議論もあり、そもそもアスペルガー症候群をシンドローム(症候群)であるとか、ディスオーダー(障害)とすべきでないという主張もあります。
みなさんご存知のスーザン・ボイル、スティーヴン・スピルバーグなどもアスペルガー症候群の診断を受けている事を公表していますし、インターネットで「アスペルガー障害 有名人」で検索すると、イチロー、中村 俊輔、眞鍋 かをり、山口 達也、草彅 剛、さかなクン、GACKT、菅 直人、舛添 要一、宮崎 哲弥、アルベルト・アインシュタイン、レオナルド・ダ・ヴィンチ、トーマス・エジソン、ベートーヴェン、ゴッホ、坂本 龍馬、ビル・ゲイツなどの名前があがります。さらに、Facebookの創設者であるマーク・ザッカーバーグ本人はアスペルガー症候群であると公表していないものの、彼の人生を映画化した監督デヴィッド・フィンチャー(David Fincher)は、彼がアスペルガー症候群であるという前提で映画を制作しました。
このようにアスペルガー症候群の人は一見して分かりにくいため、営業マンさんや販売員さんは、些細なことでも人を傷つけてしまうことを忘れず、常に言葉や態度に気をつけながら、お客様と接することをお勧めします。