004 ファイテンはなぜ効くのか?
先日とある商社さんの方が、アパレルブランドの事業戦略についてご相談に来られました。そのお話の合間に「ファイテンを付けたら肩こりが楽になるけど、なぜなんでしょうね?」と質問されました。ファイテンにはアクアチタンという素材が使われていますが、じつは、京都府立医科大学の吉川敏一教授が「アクアチタンには自律神経のバランスを調整する効果があるのではないか」との仮説を発表されている程度で、その効能・効果については、未だ科学的根拠や裏付けが乏しいのです。
では、なぜ買う人が絶えず、「ファイテンを付けたら肩こりが楽になる」という人がいるのかというと、もっともらしい商品説明と、何より、松山英樹、ダルビッシュ有、羽生結弦・・・といった著名スポーツ選手がを付けている画像を見て「プロ選手が使うんだから間違いないだろう」と思ってしまうワケです。これを神経経済学では「プラシーボ効果」といいます。でも、本当にアクアチタンという素材が医学的にその効能があるとするなら、それを使う松山英樹、ダルビッシュ有、羽生結弦はドーピングとして反則になる可能性はないんでしょうかね?
さて「プラシーボ効果」について、もう少し分かりやすい別の例でご説明すると、子供が速く走れるといわれているアキレスの「瞬足」や、二日酔いに効くといわれているハウス食品の「ウコンの力」なんかも、この「プラシーボ効果」を利用している商品です。「えーうっそぉ〜」と思った方は、アキレス「瞬足」のウェブサイト( http://www.syunsoku.jp )を見て下さい。「子供が速く走れる」なんて一言も書いてないですよ!そして、ハウス食品の「ウコンの力」のウェブサイト( http://ukon.house-wf.co.jp )も見て下さい。こちらも「二日酔いに効く」なんて一言も書いてないですよ。どうですか?ちょっと悔しい思いの人もいるのではないですか?でも、悔しがることもないんです。なぜかというと「瞬足」を履くことで「自分は速く走れるんだ!」と、思い込んで実際に速く走れたり、「ウコンの力」を飲んだので「二日酔いにはならないだろう」と思い込んで、実際に二日酔いにならないことが期待できるからです。
本来「プラシーボ効果」は、患者さんを喜ばせることを目的とした、薬理作用のない薬のことをいうところから始まり、通常、医学の世界では乳糖や澱粉、生理食塩水が使われています。効果も期待できるうえに副作用もないので、精神疾患などの疾病には有効とされてきました。「良い効果」であって「ダマす効果」ではないですからね!でも、営業マンさんや販売員さんは「瞬足」や「ウコンの力」のウェブサイトを見て、自分が売りたい商品だとどういうコピーで売り込めばいいのかを考えて、コピーをチラシやパワーポイントに入れてみて下さい。