019 医学部教授が指摘する「ギリシャ財政危機」のマスコミの誤った報道
最近では、金融業界だけでなく「ギリシャ財政危機」の話題が世界を駆け巡っています。その「ギリシャ財政危機」に関する報道に誤りがあると、京都大学大学院 医学研究科の中山健夫 教授は、著書『京大医学部の最先端授業!「合理的思考」の教科書』の中で論じています。
そもそも「ギリシャ財政危機」の報道がされ始めた頃、テレビや新聞といったマスメディアは「ギリシャは公務員が多く、その人件費は財政破綻の要因になった」と報じました。確かに、ギリシャの労働人口に占める一般政府の公務員の割合は14.1%で、日本の公務員数の割合は5.3%なので、二倍位以上ですから明らかに高いといえます。この点ではマスメディアの報道に誤りはないでしょう。しかし、ギリシャの公務員の割合14.1%に対して、アメリカは、なんと 14.1%と同数。さらにイギリスは19.1%。スウェーデンに至っては28.3%。OECD26カ国の平均でも14.4%ですから、それよりも低いということになります。これでも、マスメディアの報道に誤りはないでしょうか?このように事実に基づいた数字であっても、比較する対象によっては曲がった評価になると、中山健夫 教授は論じておられます。
この『京大医学部の最先端授業!「合理的思考」の教科書』の中には興味深い内容が沢山あります。最近、梅雨なので雨にウンザリしている方も多いと思いますが、世界中では雨が少なくて「雨乞い」をしている地域や民族がいます。では、皆さんは、雨乞いに意味があるのか?雨乞いをしてどのくらいの確率で雨が降るのか?ご存知でしょうか?この雨乞いの確率を東京医科歯科大学 佐久間昭 教授は、なんと「雨乞いは100%効果がある」と論じられました。
この雨乞いは「雨が降らない状態が続く▷ 雨乞いする▷ 雨が降るまで雨乞いを続ける▷ 雨が降った」というプロセスで進みます。ですから「祈った、降った、だから雨乞いに効果があった」という解釈になるということです。この論法のことを佐久間昭 教授は「雨乞い(三た)論法」と名付けました。合理的に物を考えるうえで、因果関係を理解することが大切ですが、私たちは目についた出来事を原因と思い込んだり、原因と結果を逆にとらえて、そのまま思い込んでいることが少なくないと中山健夫 教授は論じています。「黄色い財布を買ったからお金持ちになった」などという広告を雑誌で見かけたことがありますが、黄色い財布とお金持ちになるということに科学的な因果関係がないなら「雨乞い(三た)論法」による誤解だということになります。
では、この「雨乞い(三た)論法」をビジネスにどのように活かすかと考えるかというと、もちろん「黄色い財布」のようなウサン臭い広告を作るわけではなく、たとえば人事面の問題解決に利用するというのはいかがでしょう。新入社員のAさんは中国人です、だから自己中心的な人なんです。なんて決めつけていることはありませんか?そのAさんの両親が将来日本で働くことを考えて、小さい頃から日本人学校で育てていたらどうでしょうか?Aさんは日本人に囲まれて育ったかも知れません。そうであれば、Aさんが自己中心的な人であることに中国人であるという理由の他に別の理由があるのかも知れません。新入社員のBさんは低血圧で朝起きれないから毎日遅刻をします。上司は体調のことなので仕方がないと思っていました。でも、所属部署が変わった途端にBさんの遅刻はなくなりました。このようなことも珍しいことではありませんよね?因果関係を考えずに原因と結果を思い込んでしまうと、ビジネスの上でもトラブルを起こすことになるかも知れません。
逆に、経営者の方においては「事業を成功させるまで諦めない」という雨乞い(三た)論法的な考え方もよいと思います。成功するまで諦めないということは「諦めなければ事業は100%成功する」ということを科学的に論ずることができるといえます。あなたのお仕事に「雨乞い(三た)論法」がどのように活かせるか 検討してみてください・・・