028 孫正義さんの描く近未来を神経科学的に解釈してみました
2015年7月30日開催のソフトバンクの法人向け大規模イベント「SoftBank World 2015」に行ってきました。そして、そのイベントの基調講演で、孫正義さんが今後の成長戦略について語りました。孫さんは、同社の新たな成長分野は「IoT・AI(人工知能)・ロボット」の3つだと語られましたが、僕が気になったのが「AI(人工知能)」と「ロボット」のことでした。
AI(人工知能)について、同社はIBMと提携し「人工知能 IBM Watson(ワトソン)」の開発と日本展開を、共同で進めることを発表したそうです。孫さんは、3年後の2018年には人の脳細胞の数である300億を超えると予測。それにより、銀行の融資担当者やホテルの受付、簿記や会計といった事務など、世の中にある仕事の半数近い業種・職種が30年以内に人工知能にとって代わられると語られました。しかし「仕事がなくなる」と、悲観的になる必要はなく、それにより私たちは、よりクリエイティブな活動や、未知の課題の解決に注力できるようになると語られました。「人間が当たり前のようにやっている作業の多くは(人工知能に)置き換えられる時代がやってくる。そこで人工知能が苦手なことを、人間がもっと磨いていけば良い」と語られました。ではここでいう「人工知能が苦手なこと」とは、どんなことでしょうか?孫さんは以下の3点が人工知能が苦手なことと指摘しました。
❶ 未知の課題を解決
❷ 芸術などのクリエイティブな活動
❸ 新しい技術の創造
いかがですか?皆さんのお仕事が、この3つのいずれかに該当しているでしょうか?もし該当していなければ、恐らくそのお仕事はなくなる運命にあるでしょう。
次にロボットの件ですが、既に同社が発売を開始している「Pepper」を、皆さんもご存知だと思いますが、Pepperのどういう点が凄いのかをご存じの方は少ないのではないでしょうか?どこが凄いかということについては大きく2点ご説明がありました。先ず一点目は「世界初の心を持ったロボット」つまり、感情を認識できる機能を備えたという点です。Pepperは、自身が発した言葉や行動に対して、人間の言葉や表情などの反応から、ドーパミンやセロトニンなど人の内分泌物質の状態を予測し、相手の感情がポジティブなのか、ネガティブなのかを理解するそうです。つまり、Pepperが発した言葉や行動に対して喜んだり、褒めたりするとその言葉や行動を繰り返し行うそうです。二点目は、Deep Learning(深層学習)という機能があることです。Pepperは、インターネットを内蔵しているので、インターネットで検索できることは瞬時に答えられます。つまり、過去に起こったことや過去の知識は殆ど記憶しているようなものです。
このPepperをさらにビジネス向けにバージョンアップした「Pepper for Biz」を法人向けに10月1日に発売を開始することも発表しました。既にネスレ日本は、昨年の10月からPepperを全国の家電量販店など1,000店規模に配置し「ネスカフェ」のコーヒーマシンの接客に活用しているそうです。そして驚いたことに、人間が販売していた時と比較して20%売上を向上し、しかも人件費とPepperの導入費を比較すると、約1億円のコストカットが出来たそうです。確かに、商品知識の乏しい方が商品説明をするより、Pepperが商品説明をした方が、聞いてみたいと思うし、常に新しい情報を提供してくれることでしょう。残業代も要らない、必要なら24時間働いてくれるPepper for Bizは、派遣社員のお給料のようにレンタルプランで提供されるそうですが、その費用は、なんと月額5万5000円と格安!僕はこの話を聞いて、近い将来全ての企業がPepper for Bizを採用するのではないか?と感じました。孫さんは、Pepperの感情機能について次の通り語られました。
『ありとあらゆる感情の原則は、ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンで成り立ちます。人間は気持ちが良いということを感じたら動機になります。強烈な快感と強烈な不快感を動機にしています。行き過ぎるとおかしくなりますので、コントロールするのがセロトニンです。これで理性、モラル、社会性などというものが生じるのです。Pepperは、外部情報のインプットを得て、擬似的なホルモンバランスを生成しています。さまざまなアクションを起こし、自らの意思、考えで人々と触れ合っています。』
これは、人間の脳機能に関する神経科学の分野の研究が、2,000年以降急速に進んだからだと僕は感じています。そして、最終的に人間の脳機能が全て解明され、同じ機能をAIのテクノロジーで再現できた日に、脳だけで生きることのできる、人が死なない日が来るかも知れません。そんな夢のような日が、もうすぐそこに来ていることに動揺を感じてしまいます。皆さんはどう思われますか?