044 ヒートマップ解析なしでは語れないこれからのマーケティング(パッケージ編)

しばらくニューロマーケティングを離れて、主観的な意見を書かせていただきましたが、今回からニューロマーケティングに関わる記事に戻そうと考えています。その第一回目は、パッケージデザインにおけるヒートマップの重要性について書きます。

 

最近、マーケターだけではなく、ビジネスマンが”消費者インサイト”、”コンシューマー インサイト”、”ショッパー インサイト”、”ユーザー インサイト”などの言葉を使う場面が増えてきたと感じます。『インサイト』、『ショッパー・マーケティング』の著者であり、日本大学 非常勤講師の桶谷 功先生は、ショッパー インサイトやインサイトの定義について以下の通り論じておられます。

 

『簡単に言えば「消費者のホンネ」のことです。ただ、ホンネのすべてがインサイトかというと、そうではありません。ブランディングやマーケティング活動のアクションにつながるものに限られます。そうでないものは、いくら消費者のホンネであってもインサイトではありません。消費者自身が気づいていないような深層心理の中で、マーケティング活動に活用できる「心のホットボタン」が、インサイトです。

 

インサイトは、最初は消費者インサイトを探ることから始まって、今は店頭のショッパー・インサイトを探る段階にまでなってきています。「消費者インサイト」であれば、「思わずその商品が欲しくなるポイント」のことですし、「ショッパー・インサイト」であれば、「売場の前を通りかかったときに「あ、これ、いいな。欲しいな」と思うポイント」ということになります。そのポイントをとらえて、商品開発やコミュニケーション、店頭プロモーションをするのが本来のインサイトです。』*1

 

簡単に要約すると、深層心理の中で、マーケティング活動に活用できるポイント=インサイト。「これ、欲しいな」と思うポイント=ショッパー・インサイトということです。そして、これらのインサイトを調べるリサーチのカテゴリーの中に精神・神経から見たニューロマーケティングがあったり、無意識の行動から見るエスノグラフィーがあると考えられています。そして、それらのインサイトを探る解析ツールの一つとして、今回の「ヒートマップ解析」があります。

 

ヒートマップ解析とは、コンシューマーやショッパーが商品陳列やパッケージあるいはウェブサイトを見る際に、どこに注目しているのかをサーモグラフィ画像としてビジュアライズ(可視化)するマップのことです。このヒートマップ分析を導入することにより、コンシューマーやショッパーがよく見ているポイントを赤く、あまり注目されていないポイントを青く表示することで、ヒートマップ データをもとに、ページの改善のヒントを得ることが可能です。また、改善前と改善後のデザインをヒートマップ データで比較することにより、その改善に効果があったのかどうかを検証することも可能になります。

 

最近、僕はこのヒートマップ解析に力を入れて研究しています。先日、お仕事の関係で、とある上場企業の社長さんとお会いをするチャンスをいただきました。この会社は店頭だけではなく、ECでも商品を販売されているメーカーさんでした。実際に販売されているECサイトを拝見すると、とってもキレイで洗練されたデザインのバナーが並んでいました。ところが、ヒートマップ解析をしてみると、訴求したい部分に全く視線が届いていないことが判りました。

 

商品自体は素晴らしいし、バナーもキレイで、高品質なのにお得なことが訴求していないとは、なんとも残念でした。でも、それ以上に心配なのは、このバナーで商品が期待通り売れなかった場合、販売価格を更に下げたり、最悪の場合、商品をリニューアルしてしまったりと、売れないことの原因に関連していない点に修正を加えてしまい、”改良”ではなく”改悪”になってしまうことが考えられます。

 

この記事の下にある画像は、とあるECサイトのヒートマップだそうです。もし、皆さんが、グレーのTシャツのメーカーさんのスタッフだったとして、この画像でTシャツが売れなかった場合、ヒートマップを見なければ販売価格を下げることを考えませんか?でも、ヒートマップ解析を実施すれば、その理由が価格だけでないことが見えてきます。

 

キチンとした解析を行わす「なぜ売れないのか?」その理由を、これまでのマーケティング理論だけで判断するリスクが大きいことを、僕はこれからも多くの方々に伝えて行きたいと考えています。

 

*1 読売ISマーケティング情報誌「perigee」第13号『「インサイト」を知ればマーケティングも変わる

 

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