046 安全保障関連法案に反対するデモはバンドワゴン効果に過ぎないのか?

松本人志氏が、8月9日放送のフジテレビ系「ワイドナショー」に出演し、日本の安全保障政策について「このままでいいと思っているのであれば、完全に平和ボケですよね」と意見を述べ、安全保障関連法案に反対する動きに対して苦言を呈した。*1 さらに、9月6日の放送でも「看板の文句とか見てると、僕はあまり同じ感情ではないかな」と述べつつ、主催者発表で12万人が集まったとする8月30日の国会デモについて、「継続していかないと。たまに1回だけ集まったって意味ないからね。どんだけ続けていけんのかなと思うし。それに、これ国会に向かって言うことなんかな。むしろ向こうから近づいてきてるわけやから、戦争は。そっちに向かって言わないと」と、異を唱えるべきは国会ではなく中国など外国との意見を述べた。*2

 

また橋下徹氏は、Twitterで「デモで国家の意思が決定されるのは絶対にダメだ。しかも今回の国会前の安保反対のデモ。たったあれだけの人数で国家の意思が決まるなんて民主主義の否定だ」と2015年8月31日14:25にTweetした。私は安保法案に対して賛成であるとか反対であるとか一方的な意見を論じるつもりは全くないが、松本人志氏や橋下徹氏の意見には共感を感じる。

 

8月30日の「戦争法案廃案!国会正門前行動」には、3万3000人の方が集まったそうだが、誰のためにデモを行ったのか?「事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!」というのは誰もが知る邦画のセリフだが、戦争法案で考えた場合、隣国と接する地域の方を現場と考えるのは妥当ではないか?

 

尖閣諸島に近い沖縄県石垣島で漁船を操る藤本浩さん(47)は「石垣島の目の前には中国の脅威がある。守るべき戦術と戦略は必要」とほっとした様子。採決時に野党議員がプラカードを一斉に掲げ反対したことには「もう少し大人になって」と注文した。一方「まだ何も変わっていない。早く尖閣の海を自分たちに返してほしい」と訴えるのは、石垣島でマグロはえ縄漁を営む下地宏政さん(45)。「日本の政治は石垣の人が感じている中国の脅威を何も分かっていない。だから尖閣の問題が解決しないのだ」と嘆いた。*3

 

現場の方々の意見と対立する意見を掲げてデモに集う人々の心理を考えると、バンドワゴン効果に過ぎないのか?と思えてならない。そもそも、バンドワゴン効果(Bandwagon Effect)とは、ある選択が多数に受け入れられている、流行しているという情報が流れることで、その選択への支持が一層強くなることを指す。「バンドワゴン」とは行列の先頭の楽隊車のことであり、「バンドワゴンに乗る」とは、時流に乗る・多勢に与する・勝ち馬に乗る、といった意味である。*4

 

8月30日の「戦争法案廃案!国会正門前行動」に集った3万3000人の方々の画像を見ていると、行列の先頭の楽隊車に見えてくるのは私の主観だろうか?しかも、道路を封鎖し、「戦争させない」と掲げた看板を持ちながら、拡声器で乱暴な言葉づかいで話す方々を見ていると、暴力的で恐怖心を感じ、なんとも矛盾しているとさえ感じてしまう。

 

さて、このバンドワゴン効果をニューロマーケティング的に語ると、ウェブサイトやECサイトに「お客さんの声」を数多く掲載したり、ゲームの広告に「会員数万人超、全国のプレイヤーが繰り広げる熱き闘い!」や「100万人のWinning Post Special」というコピーを掲載したりするのも、バンドワゴン効果によって「自分だけ置き去りにされたくない」という恐怖感を払拭したい、「みんなと同じ」という安心感を得たいという心理を引き出しているのだろう。あなたのビジネスにもバンドワゴン効果を取り入れられる場面がないか再考していただけると幸いだ。

 

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撮影:早坂洋祐

 

*1 2015年8月09日 19時13分配信『The Huffington Post』(執筆者 中野渉)
*2 2015年9月06日 11時54分配信『The Huffington Post』(執筆者 吉野太一郎)
*3 2015年7月15日 23時21分配信『産経ニュース「中国の脅威、分かっていない」…国境の島では安堵と苦言』
*4 ウィキペディア日本版『バンドワゴン効果』より引用