022 Apple watchは売れなかったという驚くべき調査結果

このブログをはじめたばかりの頃に「003 Apple Watchは売れない」という記事を書きました。内容は「2015年4月24日のApple Watch日本国内発売日から5日後、とある大学院の講義内でお話する機会をいただき、その時に僕がお話したのは「Apple Watchは売れない」というお話でした。」という内容です。その記事を書いたこともあり、その後もApple Watchの動向が気になっていました。そして、その中間報告的な調査報告が、2015年7月7日アメリカの調査会社Slice Intelligenceの調べで明らかになったとMac Rumorsが報じました。

 

文末の”Apple Watch slowing down”というタイトルのグラフでは、発売当初からのアメリカ国内の販売数が販売開始以降激減し、しばらくは横ばいであったものの、5月末頃からは、再び販売数は激減していることが分かります。レポートによると、販売当初こそ一日2万個程度販売していましたが、6月末には4,000~5,000個まで激減しているとレポートしています。さらにアメリカの調査会社 Pacific Crestは、2015年のApple Watchの出荷本数予測を、1,100万本から1,050万本へ引き下げるとともに、2016年の予測も、2,400万本から2,100万本へと下方修正したとレポートしています。ただし、これらのレポートの礎になっているデータは、Appleの公式データではないので、7月21日に行われるApple社の2015年第3四半期の業績発表で公開されるので、このブログが公開される7月22日には、全てが明らかになっていることでしょう。

 

僕の周りでApple watchを購入した方を見ていると、比較的高齢者で特に男性が多いと感じます。確かな理由は分かりませんがiphoneのように分割的に代金を払うのではないので、若年層には価格的なハードルが高いのかも知れません。このApple watchを「流行」として捉えることについては議論が必要かも知れませんが、一般的に流行のメカニズムを語る際には「イノベーター理論」を礎に語られることが少なくありません。

 

この「イノベーター理論」は、アイオワ州キャロル市生まれの米国ニューメキシコ大学のコミュニケーション・ジャーナリズム学科 エヴェリット・ロジャース(Everett M. Rogers)名誉特別教授が、1962年に発表した論文 『Diffusion of Innovation』で、イノベーター、アーリーアドプター、アーリーマジョリティ、レイトマジョリティ、ラガード」などの層を定義した理論です。その理論によると社会全体の2.5%にあたるイノベーター(Innovators)が、新しいものを進んで採用し、次のフェーズで、社会全体の13.5%にあたるアーリーアダプター(Early Adopters)が採用すると論じています。このイノベーター理論をもとに考えると、既にApple watchを購入した比較的高齢者がイノベーターであるというのはいかがでしょうか?

 

そもそも、流行のものを欲しくなるメカニズムについて、目白大学社会学部社会情報学科・大学院心理学研究科の渋谷昌三 教授は、著者『他人の心理学」で「周囲の人たちと同じ行動を取ろうとする心理が働いています。これを同調行動といいます。」と論じておられます。この同調行動と同様の心理学用語として「バンドワゴン効果(Bandwagon Effect)」という心理効果があります。このバンドワゴン効果とは、アメリカの理論経済学者であり、ハーバード大学の教授であったハーヴェイ ライベンシュタイン(Harvey Leibenstein)が、1950年に発表した論文『Bandwagon, Snob and Veblen Effects in the Theory of Consumers’ Demand(消費者需要理論におけるバンドワゴン効果、スノブ効果、及びヴェブレン効果)』で、バンドワゴン効果を報告しました。

 

今回のMac Rumorsの「Apple Watchは売れていない」という情報が拡散されれば、既にApple watchを購入したイノベーターは、逆にバンドワゴン効果によって、急激にApple Watchを装着しなくなる可能性もあります。そうなればApple Watch 2のヒットも難しくなることでしょう。的確なイノベーターに興味を持っていただき、バンドワゴン効果が起こるように、あなたのビジネスで、イノベーター理論やバンドワゴン効果をどのように活かせるか検討してみてください・・・
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