042 起業家を創出するために私たちにできることは何か?(4回連続 ③)

中小企業庁が推進する「ハイリスクハイリターンな起業」ではなく「小さな起業」を促進するためには何が必要なのか?政府もアントレプレナーを応援する社会の構築に向けた取組を始め、2003年から「DREAM GATEプロジェクト」を発表したり、2011年に「一般社団法人ベンチャー サポートネットワーク」を、設立したりと起業に必要なノウハウやツールのサポートを始めています。これらの支援プログラムが行っていることを一言でいうと「リスク(RISK)の軽減」ではないでしょうか?

 

ところで、アントレプレナーが最初に行う仕事とは何でしょうか?おそらくビジネスプランの作成ですが、プランが完成すれば、お客様になりそうな方や、仕入先として想定している会社や、一緒に働くつもりのパートナーなどコアになるステークホルダーたちにビジネスプランを説明します。その時には名刺が必要です。次に社印を作り、社印が完成すると、法人登記をされ履歴事項全部証明書や印鑑証明書を発行される方も多いでしょう。そして次に、銀行口座の開設をします。メガバンクのネットバンクは毎月利用料が必要なので、振込手数料が安いという理由から最初の法人口座はネットバンクからという方も少なくないようです。ネットバンクの代表格ジャパンネット銀行のビジネス用口座開設のページを見てみると『設立6ヶ月を経過していない場合は「具体的な業務内容が確認できるホームページ」の有無で確認書類の数がちがいます』 と表記されています。同様にメガバンクで法人口座を開設する場合も「ホームページのURLを教えてください」といわれたというアントレプレナーが多いと聞きます。

 

こうして、起業に関するシミュレーションをしていると、最初に大きなお金がかかりそうなのが、ホームページであることに気がつきます。金融機関で口座を作る際に利用するだけではなく、ステークホルダーたちにビジネスプランを説明する段階でホームページがあれば、ネット環境が整った場所でスムーズにプレゼンテーションができます。私たちがこれまで行ってきた仕事は、名刺・ホームページ・会社案内・SNSページ・パワーポイントなどの営業ツールを制作する仕事です。いずれもアントレプレナーが起業時に必要とするツールばかりです。

 

話は変わりますが、ノーベル平和賞受賞者でありチッタゴン大学のムハマド ユヌス(Muhammad Yunus)経済学部長が、1976年より始めた無担保で少額の資金を貸し出すマイクロ クレジット=グラミン銀行は、有料のサービス提供活動による社会的課題の解決を目指す「ソーシャル ビジネス」の代表例として、最大限の利益を追求して貧困を軽減するビジネスであると世界から賞賛されました。このグラミン銀行は貧困層を対象にした比較的低金利の無担保融資を主に農村部(ベンガル語でグラミン)で行っています。このサービスは、お金のない人が今後の生活のために生活資金の融資を受け、今後の生活で得た収入で返済していくというサービスですが、特徴的なことは、無担保融資が前提になっているということです。つまり、返さなくても何か取られるわけではありません。ところが、無担保でありながら貸し倒れ率2%と極めて低いことに驚かされます。

 

話をアントレプレナーに戻しますが、お金がないが将来の返済に期待ができるという点では「小さな起業を目指すアントレプレナー」も「マイクロ・クレジットのサービスを利用する方」と似ているのかも知れません。そう考えると「私たちにできることでマイクロ・クレジット的なビジネスはないか?」と、少しづつ私たちが向かうべき課題が絞られてきました。つまり、アントレプレナーが起業時に必要とする「名刺・ホームページ・会社案内・SNSページ・パワーポントなどの営業ツール」を初期投資することなく、事業がスタートした後に分割して支払うサービスが「私たちが向かうべき課題」だということです。しかし、これまであったようなローンや分割支払いのようなサービスではなく、グラミン銀行のように「無担保」でないと、アントレプレナーのリスクを軽減することにはなりません。実際にそんな夢のようなサービスが実現するのでしょうか?・・・「起業家を創出するために私たちにできることは何か?(4回連続 ④)」につづく。

 

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