053 技術者,製作者,デザイナーさんを”なるはや”から解放させる受注時の心得

以前のブログ「050 自責と他責と自利と他利とマーケティング」の文末で、このブログを毎回読んでいただいている読者のお一人から「作り手(技術者、製作者、デザイナー等)視点(作りてが考えるべきマーケティングとか)も書いてください。」というリクエストを貰ったことがあると書きましたが、今回は、技術者、製作者、デザイナーが仕事を受注する時に心得ておくべきことを書きます。

 

最近とあるデザイン会社の方から「クライアントの発注から納品までのリードタイムがどんどん短くなって困っています」というご相談を受けました。このような悩みは、このデザイン会社のように企業対企業だけでなく、技術者、製作者、デザイナーたちと営業員や販売員たちの間でも同じような問題が多発しています。

 

コストカット、在庫軽減といった原因だけでなく、販売現場のスタッフ減員と、スタッフのスキル不足により、第一線の事前準備が充分に整っておらず「なるはや」が日常化しているのでしょう。本来、販売現場などの第一線から技術者、製作者、デザイナーに要望を伝える際は、少なくとも「①タスクの目的は何か?②タスクのターゲットは誰か?」この2つのポイントくらいは伝えないことには、第一線の希望が技術者、製作者、デザイナーたちに伝わるハズもなく、度重なる修正が繰り返され、技術者、製作者、デザイナーたちのストレスは高まります。

 

的確な例えではないかも知れませんが、レストランに入って「ラーメンをひとつ」とオーダーし、しばらくして「味噌ラーメン」が出てきて「普通ラーメンといえば、豚骨ラーメンでしょう」という様な状態であったり、さらに豚骨ラーメンを出すと、美味しくなかったから「これなら、醤油ラーメンにすれば良かったなぁ〜」という状態ではないだろうか?この例えで考えると、ラーメンの作り手に問題があるのか?お客さんに問題があるのか?

 

事前にお店の特徴として、美味しいといわれるラーメン第一位は醤油ラーメン、第二位は味噌ラーメン、第三位は豚骨ラーメンという情報が伝わっていたらどうでしょう。そして、お客さん側は「どのラーメンがオススメか?」を聞いていたらどうでしょう。ちょっと強引な例えでしたが、ヒトが情報の共有を望むことはいうまでもなく、特に自身の弱みや自身が所属している部署の困難な状態を語ることは、精神神経科学的に「自己開示の法則」といい、相手方も自身の弱みや自身が所属している部署の困難な状態を語りやすくなり、コミュニケーションが深まることが期待できます。

 

では、具体的にどうすれば良いのか?まず自身や自身が所属している部署の現状を把握することです。例えば、「なるはやでお願いします」と、仕事の依頼が来た場合、「頑張れば明日、無理なら明後日くらいです」と答えるのではなく「前回同様の仕事をいただいた際には16時間かかったので、今回も16時間必要です」と主観が入らない返答ができるように、誰が、どんな仕事を何時間で完了したかを記録しておくことです。誰がというところまで記録されていれば、そのヒト以外が作業する場合も目安になります。さらに「じつは今、仕事がパンパンなんです」といったように、デメリットも説明したほうが信憑性が増します。これを精神神経科学的には「両面呈示」といいます。

 

そして、受注者は「バックトラッキング」を行うことも大切です。クライアントさんなど発注側は、自分の都合で一方的に電話や短文のメールで発注するケースがあります。その時に「今回の発注の目的は◯◯をすることで、ターゲットは◯◯で、納期は◯◯で、使える素材は◯◯で、納品仕様は◯◯ですね。」と発注内容を整理して、メールやFAXなどテキストとして記録し共有することです。ラーメン屋さんなどで「ご注文を繰り返します・・・」というやつです。ミーティングの議事録なども同様で、このバックトラッキングは、日本語で「オウム返し」ともいいますが、単なる確認だけでなく、ラポール(信頼関係)を築くために有効な方法です。バックトラッキングを行うことで、発注者は自分の話がよく理解され、受け入れられているという気持ちになります。

 

今回は、技術者、製作者、デザイナーと他部署、クライアントさんとの受注時、発注時のトラブルを軽減する方法を書きました。自己開示、両面呈示、タスクの記録(担当者や作業時間等)、バックトラッキングなどを職場の改善に生かしてみてください。

 

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