054 To Cビジネスではお客さまのクレームから今後の戦略を考えるべき

一般のお客さまを相手にするTo Cのお仕事をされている方にとっては「お客さまからのクレーム」は日常茶飯事なことです。そのクレームを発するお客さまの心理を「思い通りにならない事実に対するストレス発散の一方」といってしまえばそれまでですが、精神神経科学的に考えると「お客さま自身がコントロールを失った状態」と考えられます。お客さまは、失ったコントロールを回復するためにクレームをぶつけ、クレームを受けた側は、クレームに対応することで、お客さまのコントロールを回復させます。

 

心理学では「物事をコントロールしているのは、自分の行動や能力などである」と考える傾向が強い人を「内的コントロール型」といい、「物事をコントロールしているのは、他者や運など自分以外のものである」と考える傾向が強い人を「外的コントロール型」という概念で語られます。内的コントロール型のひとは、日頃からコントロール感があるため、多少コントロール感を失っても、それを取り戻そうと「怒る」必要はありませんが、外的コントロール型の人は、日常的にコントロール感が得られないため、自分に少ししかないコントロール感が奪われると、それを取り戻そうと「怒り」ます。

 

ですから、「運」をビジネスとするギャンブル性の高いパチンコ屋さんなどのビジネスにはクレームが多くて当然といえます。パチンコ屋さんのクレームを集めたサイトを見ると、トイレに石けんがない、何日オープンですか?、店内が暑い、店員が高齢化、ライバル店の真似、制服が微妙、遊技機が変わってしまった、何日オープンですか?・・・など、経営者が見たくないクレームが並んでいます。しかし「見たくない」、「限られた意見」と考えていては、クレームを発するお客さまのコントロールは回復しません。

 

牛角、土間土間、かまどか、しゃぶしゃぶ温野菜などの外食チェーンを幅広く展開し、その運営に手腕をふるうレインズインターナショナル代表取締役社長の西山知義氏は、著書『クレームを生かすほど会社は伸びる』で「そのクレームの多さを逆にチャンスと考え、クレームをくださったお客様には、一律300円お支払いした。そしてその声を徹底的に分析、対応することからすべては始まった。」と記しています。

 

パチンコ屋さんのクレームを例に、その対応策の一例を考えると、以下のような対応が考えられます・・・

 

トイレに石けんがない▽
石けんを置く。+トイレに「石けんがなくてご迷惑をかけました」とチラシを貼る。

 

何日オープンですか?▽
出入口にオープンの日時を大きく表示する。+ホームページ等にも明確に表示する。

 

店内が暑い▽
温度設定を下げる。+それでも暑ければサーキュレーターを置く+紙おしぼりをサービスする。

 

店員が高齢化▽
若年者が魅力を感じる雇用条件か確認し、若年者が魅力を感じる雇用条件に変更する。+今後の採用では若年者を優先に採用する。

 

ライバル店の真似▽
ライバル店と類似しないサービスや広告を心がける。+他店にないサービスを実施する。

 

制服が微妙▽
予算があれば制服のリニューアル▷予算がなければ以前の制服のリフォームなどを検討する。

 

遊技機が変わってしまった▽
遊技機を変えた理由とそれを詫びる広告やポスター、ホームページを掲示する。

 

上記のように言葉にすることは簡単でも、実際は色々な問題が錯綜し簡単ではないと思いますが、西山知義 社長のように「クレームをチャンスと考え、徹底的に分析、対応すること」を考えないことには、これからのTo Cビジネスは成り立たないでしょう。こういう思考は、050 自責と他責と自利と他利とマーケティングでも記した、交流分析(Transactional Analysis)の提唱者であった、カナダ・ケベック州出身の精神科医&心理学者であるエリック バーン(Eric Berne)博士が残した言葉に「You can not change the other people and the past. But, You can change yourself and the future.(他人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられる)」という名言に通じる思考だろう。

 

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