060 クリエイティブ シンキングのあとにロジカル シンキングを行うことが本当に正しいのか?

「サービス業」とは、日本標準産業分類による大分類であり「物品ではなくサービスを提供する業務」と定義されているようですが、最近では広い範囲の仕事がサービス業化してきていると感じます。

 

商品をプロモーションする際に、商品自体のメリットを伝えるというよりは「その商品があればどんな生活ができるのか」といった表現をすることも、モノではなくその先のことを提供しているといえ、これもサービス業化しているといえるかも知れません。いい換えれば「商品を製造販売するメーカーですらサービス業化してきている」といえる時代なのかも知れません。

 

そんな多くのサービス業の方々から「より売上を上げたい」、「利益を増やしたい」、「顧客を集めたい」というご相談を受けることがよくあります。その時に考えることが、アメリカの心理学者であり、Santa Ana Army Air Base(心理学研究所)ディレクターのジョイ ポール ギルフォード(Joy Paul Guilford)博士が提唱した「収束的思考と拡散的思考」という概念です。

 

まず、収束的思考とは、すでにある情報から正しい答えへ辿り着く思考方法です。そのために多くの情報を集め、より早く正確に正解を導き出します。「一定のプロセス、フレームワークに従って(論理的に)物事を整理・分析し、考えること」をロジカル シンキングといいますが、この収束的思考に近い概念といえるのではないでしょうか。

 

次に、拡散的思考ですが、これは情報を元に様々な方向に考えを巡らせ、まだ存在しない新しいアイディアを生み出す思考方法です。決まった答えへ辿り着く収束的思考と異なり、自由な発想でどんどんアイディアをふくらませていく概念であり「正確さや事実よりも、楽しさやノリを大切にする」クリエイティブ シンキングに近い概念といえるのではないでしょうか。

 

MBAなどの教科書では、クリエイティブ シンキングによってあらゆる方向に制限なく自由に発想し、アイデアをばら撒く作業が第一段階で、次に、事実(ファクト)やデータに基づき、クリエイティブ シンキングによってあらゆる方向に制限なく自由に発想し、ばら撒かれたアイデアを収束して行き、一つの答えに到達するというようなことが論じられています。

 

確かに、楽しい、面白い、嬉しいという発想から派生するクリエイティブ シンキングはアイデアの幅を広げるには良い思考だと思いますが、全ての企業、全てのヒトにその能力が備わっているわけではありません。また、2つのフェーズを経過することで時間がかかります。

 

もしもクリエイティブな能力に乏しいヒトが集まった企業だったり、あるいは短時間に答えを出す必要があれば、クリエイティブ シンキングのフェーズを経由せずに、いきなりロジカル シンキングから思考することも決して悪いことではないと私は考えています。

 

企業のマーケティング担当者が、楽しい、面白い、嬉しいという発想を思い巡らすのではなく「お客様の意見を集約するとこういう問題と、ああいう問題が考えられます。ゆえにこういう対策と、ああいう対策が有効ではないでしょうか?」といった思考です。なぜか?どうしてか?イシューは?そんなところから考えることの方がこの時代には合っているように思えます。

 

しかし、ロジカル シンキングだけでは、競合他社と同様の戦略・戦術になる可能性も高く、新しいモノが生まれないでしょう。ではどうするか?私は、クリエイティブ シンキングのあとにロジカル シンキングを行うという順序を逆転させ、ロジカル シンキングのあとにクリエイティブ シンキングを思考することをお勧めしたい。

 

つまり、一つの答えからいくつかの方法を考えるということです。そして、その成功の可能性とリスクを予測し、優先順位をつけて多くのことにチャレンジしていくことが望ましい時代ではないか?と考えています。

 

コンサルティングの仕事をしていて思うことは、じつはコンサルティングにもロジカル シンキング型コンサルティングとクリエイティブ シンキング型コンサルティングの2種類のタイプがあって、発想が豊かな経営者にはロジカル シンキング型コンサルティングが最適で、事実(ファクト)やデータに強い経営者には、クリエイティブ シンキング型コンサルティングが最適だと考えています。

 

その両方の能力を備えるコンサルタントがいるとすれば、それは最強でしょうが、実際にはいずれかのタイプに分かれるでしょう。経営者のみなさんは、ご自身や自社の資質がどちらのタイプかを見極めて、コンサルタントをお選びになることをお勧めします。

 

収束的思考 & 拡散的思考