068 いまさら聞けない”KPI”と”KGI”の導入と2つの意味の違い

以前からよく耳にしていた”KPI”というビジネスワード。そして、最近その”KPI”に近い意味で使われるようになった”KGI”。そのどちらの意味も知りませんという方も、”KPI”は知っているけど”KGI”は知らない、あるいは、その逆の方もいらっしゃるのではないでしょうか? そう言う僕も、両方の言葉の違いをシッカリと理解しているわけではないので、今回は、この”KPI”と”KGI”のそれぞれの意味と違いを確認し、その概念をどのようにビジネスに取り込めば良いのかを考えます。

 

まず、”KPI”についてですが、Wikipedia日本語版には以下の通り表記されています。

 

KPI(Key Performance Indicators)重要業績評価指標は、組織の目標達成の度合いを定義する補助となる計量基準群である。KPI はビジネスインテリジェンスにおいて、現在のビジネスの状態を示すものとして使われ、今後の対応策でどうなるかを予測するのに使われる。KPI をリアルタイムで監視することを BAM(ビジネスアクティビティ・モニタリング)と言う。KPI は、リーダーシップ育成、雇用、サービス、顧客満足といった定量的計測が難しいものを定量化する場合に使われることが多い。KPI は(例えば、バランスト・スコアカードのような技法を通して)一般に組織の経営戦略と関連している。

 

・・・いかがですか? この文章からどんな概念で、どのようにビジネスに取り込めば良いのか判りますか?僕はサッパリ判りませんでした。そして、何冊かの書籍を読んで僕なりに出したKPIの定義が「大きな目標を達成するための小さな数値的目標」という解釈です。

 

たとえば「年間売上◯◯億円」という目標を掲げたとします。その売上の構成を考えると「売上 = 客数 × 客単価」と考えられます。その、”顧客獲得”や”顧客単価向上”を数値目標にしたものが、KPIだと思われがちですが、僕の解釈は違います。

 

「売上=客数X客単価」に異論はありません。では、客数とは何か。「客数 = 既存顧客 + 新規顧客 - 流出顧客」と考えられます。すると「既存顧客を守る」「新規顧客を増やす」「流出顧客を減らす」という新しい3つの小さな目標が生まれます。

 

同様に、客単価とは何かを考えると「客単価 = 購買頻度 × 購買点数 × 一点あたり単価」と考えられます。そう考えると「購買頻度を増やす」「購買点数を増やす」「一点あたり単価を上げる」という新しい3つの小さな目標が生まれます。

 

そもそも「年間売上◯◯億円」という一つの目標を深堀していくと、「既存顧客を守る」「新規顧客を増やす」「流出顧客を減らす」「購買頻度 を増やす」「購買点数を増やす」「一点あたり単価を上げる」という6つの小さな目標が生まれました。さらにここでいう「既存顧客」や「購買頻度」の構成要因を考えていくと、多くの目標が生まれてきます。その多くの目標こそが”KPI”の考え方であり、その目標が細分化できないところまで深堀できれば、質の高いKPIだと僕は解釈しています。

 

この上記の例えはマーケティング的なお話ですが、KPIはマーケティングの領域に限らずビジネス全般に使える概念だと考えています。たとえば、会社全体の目標を細分化できないところまで深堀して、それを担当部署や担当者の目標として設定し、その到達度を評価基準にしたり、あるいは、なかなか目標設定の難しい開発部署などの目標設定にも有効な概念といえます。

 

では、”KGI”とは何か、KPI同様、Wikipedia日本語版で調べると「重要目標評価指標 (Key Goal Indicator)」とあるだけで、残念ながら詳細な記載はありません。もしも詳細なページがあったとしても、僕には理解し辛い内容でしょうから、僕なりの解釈をいうと、KPIが Key Performance Indicators であったのに対して、KGIが Key Goal Indicator ですから、重要というより”最重要目標”や”最終目標”という解釈が妥当だと考えています。

 

先程の例でいうと「年間売上◯◯億円」という目標がKGIに該当すると僕は解釈しています。このKGI設定で大切なことは、KPI同様「年間売上向上」ではなく「◯◯億円」という数値目標があることです。その数値が自然増で達成可能な数値なのか、大胆に戦略を変更しないと達成できない数値なのかによってKPIが変わってくるからです。

 

そして、全てのKPIを達成すればKGIが達成する構造になっていることが重要です。KGIは一度設定すれば容易に変えるべきではないと思いますが、KPIについては、市場状況や競合他社によって変えるべき事態が起こります。その際は、状況に応じで変化させることで、KGIの達成率が向上する可能性が高くなります。

 

僕はこれまで、KPIの概念を「フェーズ(Phase)」や「レイヤー (Layer)」という言葉で、そしてKGIは「ゴール(Goal)という言葉を使って説明してきました。新しいキーワードが浸透してくると、つい使いたくなりますが、大切なことは、その用語を使うことではなく、用語の根底にある概念にあり、新しい概念を取り込みつつ、聞き手にとってどんな言葉が一番判りやすいかが大切だと考えています。

 

いまさら聞けない"KPI"と"KGI"の導入と2つの意味の違い