071 映画”ターミネーター”はノンフィクションになるかも知れない。

最近” AI(Artificial Intelligence,人工知能) “の話題が尽きません。先日、スタンフォード大学のコンピュータ科学で非常勤研究教授を務め、グーグル・グラスを開発したGoogle Xの元CEOのセバスチアン バークハード スラン(Sebastian Burkhard Thrun)氏の講義を聴講しました。さらに、WIRED日本版 編集長の若林恵氏と『デジタルは人間を奪うのか』(講談社現代新書)の著者で、人間とテクノロジーの未来を考える小川和也氏による「人工知能の未来」をテーマとした講演にも参加しました。

 

これら” AI “をテーマとした講演では、”シンギュラリティ(Technological Singularity,技術的特異点)”は、いつやってくるのか?」から始まり「シンギュラリティを恐れる必要はなく、むしろポジティブに受入れるべきだ!」という結論で締め括られると言うおおよその流れが決まっています。

 

さて、ここで改めて用語についてのおさらいですが、先ず” AI(人工知能) “とは、1956年のダートマス会議(Dartmouth Conference)で、マサチューセッツ工科大学やスタンフォード大学で教授を務めた計算機科学者で認知科学者であった、故 ジョン マッカーシー(John McCarthy)教授により命名された名称です。

 

この名称を端的に説明するのは難しいですが、人工知能学会の解説によると” AI(人工知能) “とは、知能のある機械のことであると論じています。さらに、人工知能の研究には二つの立場があり、一つは、人間の知能そのものをもつ機械を作ろうとする立場。もう一つは、人間が知能を使ってすることを機械にさせようとする立場であり、実際の研究のほとんどは後者の立場に立っており、人間のような機械を作っているわけではないと論じています。

 

これ以上、深入りすると一本のブログでは説明ができなくなるので、AI(人工知能)についてはここまでにしておいて、では”シンギュラリティ(Technological Singularity,技術的特異点)とは何か?元サンディエゴ州立大学数学教授で、SF作家でもあるヴァーナー シュテファン ヴィンジ(Vernor Steffen Vinge)教授と、元マサチューセッツ工科大学教授で、Googleで大脳新皮質をコンピューターシミュレーションする「Neocortex Simulator」に取り組んでいるレイ カーツワイル(Ray Kurzweil)教授が、発表した概念です。

 

Wikipedia日本語版によると、技術的特異点は「科学技術が何らかの原因で予測不能なほど爆発的に発達し始める地点」と表現されています。前段を知らないと判りにくい表現ですが、僕なりに表現すると「人類ではなく強い人工知能やポストヒューマンによって科学技術の進歩を支配するようになる時点」と解釈しています。もっと簡単に言うと、映画 ターミネーター(The Terminator)に出てくる” 審判の日(Judgment Day)”です。

 

空想のお話に聞こえるかも知れませんが、2015年2月6日、東京・霞が関の庁舎内で総務省が開催した「インテリジェント化が加速するICTの未来像に関する研究会」では、「2045年にはコンピュータの能力が人間を超え、技術開発と進化の主役が人間からコンピュータに移る特異点(シンギュラリティ)に達すると論じられ、このことがいわゆる「2045年問題」として語り始められました。

 

ところが、シンギュラリティは2045年よりも早いと言う説も多く、ヴァーナー シュテファン ヴィンジ(Vernor Steffen Vinge)教授と、レイ カーツワイル(Ray Kurzweil)教授は、今後 AI(人工知能)に関する技術革新は、ムーアの法則(加速度的変貌)の指数関数的傾向に従い、収穫加速の法則(Law of Accelerating Returns)に基づいて発展すると考えました。

 

先ほど触れた映画 ターミネーター(The Terminator)は、1984年5月12日(木曜日)のロサンゼルスからお話が始まります。そして、2029年に”審判の日(Judgment Day)”つまり、シンギュラリティが訪れるという設定になっています。これは空想のお話ですが、驚いたことにムーアの法則や、収穫加速の法則に基づいて考えると、シンギュラリティは映画 ターミネーターの設定と同じく2029年に訪れると論じる研究者が多く、僕もこの2029年説に共感しています。

 

1985年に公開された、映画 バック トゥ ザ フューチャー(Back to the Future)で、2015年の未来で自動運転や、ウィールのないスケートボードや、自動乾燥機付きジャケットが表現されていたことが現実になったり、1982年に発表された漫画”AKIRA”で、2020年の東京オリンピック開催が設定されていたりと、空想の物語が現実になるように、2029年にシンギュラリティが訪れることが、現実になるかも知れません。

 

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