076 「今年一年は早かったなぁ〜」と感じている方の心理を学術的に考える。

いよいよ今年も残すところ、あと2日になりました。この時期になると「今年一年は早かったなぁ〜」と感じている方が多いのではないでしょうか?今回はそんな「今年一年は早かったなぁ〜」と感じている方の心理を学術的に考えたいと思います。

 

皆さんは「ジャネーの法則」という概念をご存知でしょうか?この「ジャネーの法則」は、フランスソルボンヌ大学で哲学を研究していた心理学者、ポール アレクサンドル ルネ ジャネ(Paul Alexandre René Janet)が、1928年に発表した『 L’évolution de la mémoire et de la notion du temps, A. Chahine,』という論文内にある時間観念に関する諸説の一つです。

 

ミネルヴァ心理学辞典によると、「生涯のある時期における時間の心理的長さは、年齢の逆数に比例する。主観的に記憶される年月の長さは、年少者にはより長く、年長者にはより短く評価される。」と記されています。

 

大変壮大な概念なので、要約して言うと「20歳の1年は、それまで生きてきた20分の1であり、50歳の1年は、それまで生きてきた50分の1であるから、50歳の方が1年を短く感じる。」と言う概念です。なるほど納得できる概念です。

 

ところで、理論物理学者であるアルベルト アインシュタイン(Albert Einstein)が、1905年に発表した特殊相対性理論と、1916年に発表した一般相対性理論の総称であり古典物理学の一つである「相対性理論(Relativitätstheorie)」をご存じの方は多いでしょう。

 

この理論は、物理学などの自然科学の分野のみならず、社会的現象に対しても応用できる概念として社会科学の分野でも広く受け入れられてきました。「熱いストーブに1分間手を載せてみてください。まるで1時間ぐらいに感じられるでしょう。ところが、かわいい女の子といっしょに1時間座っていても、1分間ぐらいにしか感じられません。それが、相対性というものです。」明らかではありませんが、アルベルト アインシュタインが語った言葉だそうです。

 

つまり、時間観念は物理的以上に心理的に決定すると言っています。こちらも納得できる概念です。そして、このアルベルト アインシュタインの言葉と同じような言葉がたくさんあります。

 

イングランドの劇作家、詩人であるウィリアム シェイクスピア(William Shakespeare)は、「苦痛とヒマは、時間を長く思わせる。不幸な時間を短くするヒントは、“快楽”と“行動”である。イヤなことを忘れるためには、集中できること・夢中になれることをする。楽しめること・気もちよくなれることをする。イヤなことをやる時には、イヤイヤやると余計に長く感じられる。余計なことを考えずに集中を心がける。何か一つでも楽しみを見つける。少しでも楽しめるように工夫する。過去の不幸から立ち直るためには、生活を忙しくする。何かに打ち込んでみる。新たな幸せを探す。」と言ったそうです。

 

ゲーテと並ぶドイツ古典主義の代表者である歴史学者であり思想家でもあったヨーハン クリストフ フリードリヒ フォン シラー(Johann Christoph Friedrich von Schiller)は、「苦しい時間は長く、楽しい時間は短く感じられる。辛い時間は長く、安楽な時間は短く感じられる。心配する時間は長く、夢中になる時間は短く感じられる。不幸な時間は長く、幸せな時間は短く感じられる。」と論じたそうです。

 

さらに、イギリスの小説家であるジョージ ギッシング(George Robert Gissing)は「時が経つのが早いと思うのは、人生というものがわかってきたからである。」と論じたそうです。

 

ここまで記してきたことを要約して考えると、皆さんが、皆さんより若い方とお話しすると「今年一年は早かったなぁ〜」と、感じることは相対的に当然のことだと言えます。さらに、同年代の方とお話しをしていて「自分の方が一年が早かった」と感じたなら、ご自身の方が「楽しく、幸せな一年を過ごした」のかも知れませんし、人生というものがわかってきたのかも知れません。

 

このブログが今年最後のブログですが、このブログを読んでいただいている方が、来年の今頃には「今年一年は早かったなぁ〜」と感じられますように祈念しております。それでは、良いお年をお迎えください・・・

 

76