084 WEB時代のマーケティングモデル “FMOT”と”ZMOT”と”SMOT”

今回はマーケティングモデルのトレンドについて考えたいと思います。

 

1924年に、サミュエル ローランド ホール(Samuel Roland Hall)が、販売・広告の実務書として書いた『Retail Advertising and Selling(小売りにおける宣伝と販売)』の中で、「広告宣伝に対する消費者の心理的なプロセス」として「AIDMA(アイドマ)」という概念を発表しました。

 

この AIDMA(アイドマ)により、ヒトは「Attention(注意)▷ Interest(関心)▷ Desire(欲求)▷ Memory(記憶)▷ Action(行動)」というプロセスを経て、購買者は購買意思決定を行うと説明されてきました。

 

また、AIDMA(アイドマ)に似た「アイドカ(AIDCA)」という概念も生まれました。こちらは、「Attention(注意)▷ Interest(関心)▷ Desire(欲求)▷ Conviction(確信)▷ Action(行動)」というプロセスを経て購買者は購買意思決定を行うと説明されてきました。

 

さらに、AIDMA(アイドマ)発表の翌年の1925年、E.K.ストロング(Strong, E.K.)が『Theories of Selling 』という論文なかで、「AIDA(アイーダ)」というモデルを使って、購買者の購買意思決定プロセスを説明しました。これは、アメリカの広告唱道者セント エルモ ルイスに拠るものとStrong自身公表したので、セント エルモ ルイスの概念だと解説される場合も多いです。

 

この「AIDA(アイーダ)」により、ヒトは「Attention(注意)▷ Interest(関心)▷ Desire(欲求)▷ Action(行動)」というプロセスを経て購買者は購買意思決定を行うと説明されています。つまり、AIDMA(アイドマ)から、Memory(記憶)が抜けたワケです。

 

時代は進んで、2005年6月に電通が商標を登録した「AISASは(アイサス)」という概念が生まれました。

 

このAISASは(アイサス)により、ヒトは「Attention(注意)▷ Interest(関心)▷Search(検索)Action(行動)▷Share(情報共有)」というプロセスを経て、購買者は購買意思決定を行うと説明されました。

 

また、同年の宣伝会議2005年5月1日号のなかで、有限会社アンヴィコミュニケーションズ代表取締役 望野和美氏(元 旭通信社(現アサツーディ・ケイ)アカウント・エグゼクティブ)が「AISCEAS(アイシーズ)」という概念を発表しました。

 

このAISCEAS(アイシーズ)により、ヒトは「Attention(注意)▷ Interest(関心)▷Search(検索)▷Comparison(比較)▷Examination(検討)▷Action(行動)▷Share(情報共有)」というプロセスを経て、購買者は購買意思決定を行うと説明されています。

 

ところが、マーケティングの聖地であるアメリカでは、2004年にアメリカP&G社が、独自リサーチから「来店したお客様は商品棚を見て、最初の3秒から7秒でどの商品を買うかを決めている」という分析結果を発表し、FMOT(First Moment of Truth)というインストア(店内)に於けるマーケティングの概念を発表しました。

 

このFMOTは、これまでのAIDMA(アイドマ)、アイドカ(AIDCA)、AIDA(アイーダ)、AISASは(アイサス)、AISCEAS(アイシーズ)のように消費者の心理的なプロセス全体とは違い、購買者の購買意思決定がどの瞬間でされるのか?という概念でした。

 

さらに時代は進み、2010年、アメリカGoogle社は「私たちがコーンフレーク、コンサートチケット、パリの新婚旅行のために購買をするかどうかを、インターネットは “私たちが購買を決める方法” を変えました」という概念に基づき、提唱した購買意思決定に関するマーケティングモデルとして「ZMOT(Zero Moment of Truth,ゼロの正念場)」という概念を発表しました。

 

このZMOTという概念は、オンライン上での情報収集によって、店頭に行く前に実質的な購買意思決定の瞬間があるとした「プレストア」に於けるマーケティングの概念です。

 

つまり、FMOTで「購買者は商品棚を見て、最初の3秒から7秒で購買意思決定を行っている」と考えていたのが、ZMOTでは「購買者は店舗にくる前に購買意思決定を行っている」となりました。amazonや楽天での購入が日常となった現在では全く違和感のない概念です。

 

しかし、これでは終わりません。ZMOTで「購買者は店舗にくる前に購買意思決定を行っている」と考えていましたが、P&G社はさらに「ユーザー(商品を買ったお客様)が商品を使用した体験を通して、商品の良し悪しを判断し、その商品を継続的に購入するかを判断する」という解釈の、SMOT(Second Moment of Truth ,第二の正念場)という購買行動に関するメンタルモデルを発表しました。つまり、購買行動は、購買行動を意識する前、無意識段階で決定すると論じました。

 

ついに、一周回ってスタートに戻ったという感じです。これまでご説明した通り、AIDMA(アイドマ)、アイドカ(AIDCA)、AIDA(アイーダ)、AISASは(アイサス)、AISCEAS(アイシーズ)、ZMOT、FMOT、SMOT・・・と購買者の購買意思決定プロセスに関するモデルが進化してきました。

 

それは学者や研究者の努力ではなく、広告のない時代から、ローカル メディア、マス メディア、インターネットを使ったオウンド メディア、そして、ソーシャル メディアへとメディアが進化してきたことからすれば当然のことではないでしょうか?

 

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