098 経営者や営業担当者は”ショーンマクアードル川上”氏に学べ!

「週刊文春」3月24日号に、通名 ショーン・マクアードル川上(Sean McArdle Kawakami)本名 川上伸一郎 氏が、学歴詐称していると掲載され、話題になったことは、皆さまご存知のことでしょう。驚いたことに学歴だけでなく職歴も、さらには手術によって容姿も替え、父親の国籍までも詐称しているという疑惑があがり驚かされました。

 

違法性で考えると、卒業証書(学位記など)を偽造したわけではないので、刑法第159条の「私文書偽造」罪が適用される可能性は低いですが、軽犯罪法の「第一条 左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。(中略)十五 官公職、位階勲等、学位その他法令により定められた称号若しくは外国におけるこれらに準ずるものを詐称し、又は資格がないのにかかわらず、法令により定められた制服若しくは勲章、記章その他の標章若しくはこれらに似せて作つた物を用いた者」に違法性があるかも知れません。

 

そう考えると、今回のタイトル「 経営者や営業担当者は”ショーンマクアードル川上”氏に学べ!」は倫理的に問題があるのかも知れませんが「失敗から学べ」的に解釈して読んで頂けると有り難いです。

 

さて、この川上氏の学歴詐称疑惑の記事掲載以降、心理学に詳しい方々がBlogやSNSで、ハロー効果の事例として語っていました。ハロー効果とは日本語では後光効果とも訳される認知バイアスの一種です。

 

アメリカの心理学者・教育学者であるコロンビア大学 エドワード L ソーンダイク(Edward L. Thorndike)教授によって名づけられた造語で、心理的効果の一つであり「ある対象を評価をする時に顕著な特徴に引きずられて他の特徴についての評価が歪められる現象」のことです。*1

 

このハロー効果については、このブログの「038 あなたは知らない人のことを”なんとなく”で評価していませんか?」などでも幾度となく書いてきましたので、今回はハロー効果についてではなく、ハロー効果以外にも経営者や営業担当者は川上氏から学ぶことがあるので、その点について書きます。

 

3月16日水曜日の「報道ステーション」で川上氏が降板したのを受け、­古舘伊知郎 氏が番組冒頭で「詳しいデーターを基に斬新な切り口でコメントを歯切れ良く下さっていた」とコメントされました。

 

さらに、脳科学者の茂木健一郎 先生は自身のブログで「ショーンKさんとお仕事でご一緒した時、その素敵なお人柄に魅せられましたし、そのさまざまな問題についての見識も、素晴らしいと思いました」*2 とあります。

 

ボクは川上氏に直接お会いしたことがないので、印象を語ることはできませんが、古舘伊知郎 氏や茂木健一郎 先生のように直接お会いした方が、ポジティブな評価をされているということは、大学や大学院を修了せず学位を有しないことが、必ずしも「優秀ではない」とは言えないことを明らかにしているのでしょう。

 

では、なぜ古舘伊知郎 氏や茂木健一郎 先生のように直接お会いした方がポジティブな評価をされているか?川上氏が独自に知見を深めていたことは容易に想像できますが、それ以外にボクが注目したことがいくつもあります。

 

WEBで川上氏を画像検索すると紺系のスーツ、白いシャツ、エクボを奇麗に作った紺系のタイ、白のポケットチーフというスタイルが多く見られます。

 

繊維製品消費科学会の2010年9月30日公開の会誌にある、色彩心理学者の女子美術大学 近江 源太郎 教授の論文『色彩好悪の変遷』によると「アイゼンクは過去に世界各国で行なわれた実験データ26点を収集・再分析して、人種・性別を越えて、やはり万人に共通の好みの傾向が存在すると述べた。ちなみに、その順位は青,赤,緑,董,橿,黄である。」*3 と論じています。

 

ちなみに、アイゼンクとは、ドイツの心理学者であるキングス・カレッジ・ロンドン ハンス アイゼンク(Hans Jurgen Eysenck)教授のことであり、パーソナリティ研究の分野で活躍したアイゼンク教授の論文は、ヨハン ヴォルフガング フォン ゲーテ(Johann Wolfgang von Goethe)の「色彩論」から派生した色彩心理学の分野の研究者にとって権威ある報告と評価されています。つまり、川上氏の「紺系のスーツに紺系のタイ」というスタイルは、アイゼンク教授の概念からすると「万人に共通の好み」を突いているといえます。

 

また、川上氏は「ゆっくりと話す」ことが特徴のひとつでしたが、順天堂大学医学部 小林弘幸 教授は、著書『「ゆっくり動く」と人生が変わる』のなかで、以下の通り論じておられます。

 

ゆっくり話すと、自然と呼吸がゆっくりになります。そして、ゆっくりとした深い呼吸は何より副交感神経の働きを高めてくれるので、自律神経のバランスも整います。すると、細胞のすみずみにまでいい血液が流れるようになり、結果的に心身の最高のパフォーマンスが引き出されるのです。(中略)「ゆっくり話す」ことで得られるメリットは、ほかにもたくさんあります。

 

・ポイントを簡潔に述べられるようになり、自分の言いたいことか相手にきちんと伝わるようになる
・説得力と信頼感が増し、相手を納得させる話ができるようになる
・余計なことを言わなくなり、無用な失言をしなくなる
・どんな相手とも、感情的にならず、冷静な話し合いができるようになる
・エレガントな印象を相手に与えられる
・異性からの好感度が上がる…… *4

 

いかがですか?副交感神経的にも川上氏は、理想的な行動をとっていたと言えます。さらに、父親の国籍までも詐称しているという疑惑がありますが、日本人の西洋コンプレックスについて、京都造形芸術大学 山折哲雄 大学院長は、2013年09月03日発信の東洋経済オンラインの『日本人の教養と、根深い西洋コンプレックス』の中で以下の通り語られています。

 

明治以降、日本人は近代化に成功したけれども、政治、経済、刑法、憲法などあらゆる制度を西洋から学んできました。近代化に役立つほぼすべてのものが、西洋からの模倣です。そういう状況であれば軽蔑されても仕方がない、というのがその会長の主張です。一種のコンプレックスですよね。*5

 

確かに、山折哲雄 大学院長には共感します。真意はともかくとして、この点についても川上氏の狙いは的確だったのかも知れません。

 

さらに川上氏は、前髪を左側(向かって右側)で分けていることが多いですが、前髪を左側で分けることについて、John Walter and Catherine Walter が、 1999年に発表したサマリー『
Effects of Hair Parting on Social Appraisal and Personal Development』で、俳優や著名人、歴代アメリカ大統領の肖像画、知事、議員の髪の分け方をデータベースにして分類し「髪の分け方は決してランダムではなく系統的に左分けが多い上に、たった6人の右分けの大統領の歴史的評価はあまり芳しくないという結果が得られた」と発表しました。つまり、社会的に成功したいなら「左分け」のほうがよいと発表したといえます。*6

 

その他にも川上氏の容姿や行動から学べるべきことは沢山あるとボクは感じています。紺系のスーツとネクタイ、ゆっくり話す、左側で前髪を分ける、これだけでも経営者や営業担当者の方には参考になったのではないでしょうか?

 

*1:Wikipedia日本語版『ハロー効果』参照
*2:脳科学者のひとりごと 時々書生 茂木健一郎 オフィシャルブログ 2016/03/15 20:49 『ショーンKさんのこと。』
*3:女子美術大学 近江 源太郎(2010)『色彩好悪の変遷』繊維製品消費科学会誌Vol. 28 (1987) No. 9 P 352-357
*4:小林弘幸(2012)『「ゆっくり動く」と人生が変わる-副交感神経アップで、心と体の「不調」が消える!-』PHP研究所
*5:東洋経済オンライン(2013年09月03日発信)『日本人の教養と、根深い西洋コンプレックス』
*6:John Walter and Catherine Walter (1999)
Effects of Hair Parting on Social Appraisal and Personal Development』

 

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