110 ビジネスで成功したければ99回の失敗をしてください

最近読んだ書籍のなかで強く共感したのは、2015年のフォーブス”日本を救う起業家ベスト10″に名を連ねる株式会社メタップス 代表取締役社長 佐藤航陽氏が書かれた『未来に先回りする思考法』という書籍でした。来るべき未来をどのように予想すればいいのか?その思考法が書かれていました。

 

ニューヨークタイムズが「実際に空を飛ぶ機械が発明されるまでには、百万年から一万年かかるだろう」と社説に掲載した数週間後に、ライト兄弟が人類で初めて空を飛んだり、「赤外線がないなんて流行らない」「おサイフケータイが使えないなんて不便」と、2007年の発売当初iPhoneを否定していたひとが沢山いたり、「実名性のSNSは日本人の気質には合わないので普及しない」と、Facebookの日本進出にネガティブな意見を発していた「知識人」が多くいたことなど、人間は本来、未来を見誤ってきましたが、そんな中でもごくわずかな人は、ある「思考法」によって先見性を発揮し、大きな成果を上げてきました、その思考法が書かれていました。

 

興味のある方には是非お勧めの一冊なので、深い内容には触れませんが、その文中で、佐藤航陽氏は「ビジネスは統計的に見ると9割が失敗します。残った1割のうち十分に利益が出せるようになるのはさらに1割程度です。つまり、99%はうまくいきません*1」と論じています。言い換えれば、これは「1つの成功には99の失敗があって当然」とも解釈できます。

 

また「G1サミット」代表理事であり、グロービス経営大学院学長 堀義人氏が発起人となっている「G1政策研究所」のメンバーが進める”日本を動かす「100の行動」”について、堀氏は「どんな会社でもやるべきことを10やれば再生できる。閉塞感あるこの国も100ぐらいやれば明るい未来が開けるだろう」と自身のブログで語っていることから、この「100の行動」もまた佐藤航陽 氏の概念と近い発想なのかも知れません。

 

ところで経営者は、常々新しいことにチャレンジする場合、失敗した場合のリスクと、失敗する確立と成功する確立を分析し、失敗の確立より成功の確立の方が高く、仮に失敗したとしてもリスクは負えると判断した場合のみ”GOサイン”を出します。これはごく当たり前の日々のルーチンですが、じつはこの意思決定自体が間違っているのかも知れません。

 

経営判断を下す場面において、失敗した場合のリスクが負えないのであれば、それは実行するべきではありませんが、失敗した場合のリスクが負えるとすれば、失敗の確立や成功の確立はどうでも良いのではないかも知れません。その理由は、失敗するか成功するかはやってみないと判らないのであれば、間違った先入観を持って進めるより「成功するか?失敗するか?判らない」と考えておく方が、損切りのタイミングも逃し難くなり、むしろ失敗する確率が高い方が競合他社も競業せず、ユーザーも面白がってくれるかも知れません。

 

しかし、ビジネスにおいて「100の行動」をしようと考えると、毎月1件でも8年3ヶ月かかります。それは長過ぎるので、毎月2件で4年2ヶ月です。さらに、毎月3件で2年8ヶ月です。この位が限界だとすると、10日に1件のペースで行動をする必要があります。どうですか?皆さんの会社で、10日に1件のペースで新しいことに取り組むことは可能でしょうか?

 

「いやいや99回も失敗していたら会社は倒産するよ!」と思われる経営者もいるかも知れませんが、これは統計から見た「現実」ですから99回の失敗を放棄した時点で、1つの成功は得られないと考えるべきかも知れません。

 

グローバル企業の時価総額*2をみると、世界第1位のグーグルが64兆円、第2位のアップルが59兆円、第3位のマイクロソフトが49兆円といずれも、小国のGDPに匹敵するくらい巨大に成長しています。これらグローバル企業には、ある共通点があります。それは「同じ商品や同じサービスを売り続けていない」ということです。つまり、社会の変化に合わせて、社会から必要とされる商品やサービスを常に発売し続けているということです。

 

これらのグローバル企業は「100の行動」のようなチャレンジを絶え間なく継続してきたわけであり、言い換えれば、社会構造の変化が進む現代に於いて企業を継続するためには「100の行動」が必須だということです。

 

日々必死に仕事をしているのに、一向に経営が安定しない、将来の業績向上に期待ができないという経営者も多いことでしょう。少子高齢化が進み、お金を使う生産年齢人口は激減しています。しかも国内の平均給与はここ10年で見れば下降傾向にあります。これでは、一生懸命仕事をしているのに、一向に経営が安定しない、将来業績向上に期待ができないというのも当然のことです。

 

低迷する業績に一喜一憂することなく「100の行動」を初めてみることをお勧めします。

 

*1:佐藤航陽(2015)『未来に先回りする思考法』ディスカヴァー・トゥエンティワン
*2:2016年2月1日時点のニューヨーク株式市場時間外取引額参照

 

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